ファッション業界の中でも無類の古着好きとして知られるスタイリスト・原田学。彼が偏愛してやまないものは、色や柄、デザインにとにかく強い主張がある古着。ここでは、普通に着ていたら思わず「それ、本気?」とツッコまれそうなほど個性たっぷりのアイテムを紹介していく。原田曰く、「お笑いのボケがそうであるように、古着も斜め上であればあるほどかっこいい」。今回は、企業やブランドロゴの入ったユニークな古着について語る。

 

知れば知るほど沼る、ロゴの面白さ

これを書いているのが12月で、この時期に注意するエリアが表参道。イルミネーションという万人受け、いや億人受けするイベントが始まるとこのエリアは、夕方以降の大渋滞や人の多さでスタイリスト仕事のリースや返却に支障をきたすので注意が必要なのです。といっても嫌いではない、娘と車で見に行ったことも何度かあります。綺麗ですもんね、いつもそれで年末を感じる部分もあります。ちょっと東京人ぶりましたが自分、根は関西人です。

表参道はいつのまにかハイブランドの路面店で席巻されている。どこかテナントが空くとまたハイブランドに変わる。オセロで角を取られた状態。インバウンドの影響もあり歩いている人の多くがハイブランドを着てるんです、本当に。「なぜハイブランドを着てるってわかるかって?」。服に大きくブランド名が入っているから。

少し前に表参道の交番の前の歩道橋を渡る時に、前の男子が背中に“ルイ1?世”じゃない方の“ルイ~”のブランド名が大きく入ったスタジャン(最近はアワードジャケットとか呼ぶ)を着ていて、それを後ろで眺めながら「なんでコレ?」「ブランド名いるんか?」「こんな大きく入って恥ずかしないん?」「デザインで買おうや」「大阪のおばちゃんの好みと一緒やん!」とか色々と思いながら、歩道橋を下りて目の前のお店のディスプレイのガラス面に映った自分の姿をパッと見ると、シャツに大きく「????」のロゴ、パンツのサイドに「SUZUKI」の文字、スニーカーにはアメリカの銀行の名前が大きく入っていました…。「コレあかんやん」。自分の方がロゴまみれやし。さっき前を歩いていた男の子の方がロゴがかわいらしい。「本当にごめんごめんや」って心の中で謝りました。

 

自分めちゃめちゃロゴ好きでした。ロゴ大好き!で~す。大阪のおばちゃんと好み一緒やで~。「飴ちゃんあげるわほんまに」って大阪のおばちゃんに自分がなってしまってくるほどに。

よく考えてみると自分が選ぶ古着アイテムには必ずといって良いくらいロゴが入っているかもしれません。前回のベースボールシャツもそのひとつですから。ロゴ入り古着で一般的に分かり易いアイテムだとTシャツやスウェットシャツ。ロゴは有名ブランド、一流企業の「Coca-Cola」や「Apple」とか、一流大学「YALE HARVARD」などが古着市場でも評価されやすいのですが、個人的には、そこよりも文字の入り方が選ぶ基準だったりします。

そんなスウェットやTシャツのロゴの入り方は時代によって流行があり、その手法で何年代とか判ったりもします。古いモノだとフェルトなどの切り文字やフロッキープリント(プリント部分の表面に細かな毛羽立ちがある)など。1950年代から1960年代に多いカラーフロッキーなんて呼ばれるフロッキープリントは、表面の毛羽立ち部分に色付け(数色)を行うことでより柄を浮き上がらせることができ、美しいということで凄い人気があります。たしかに古い(ヴィンテージ)のが良いのは当然であり自分も好きですが、ただ古いだけが良いわけでもないので1980年代後期から1990年代初期あたりの発泡(名前の通りプリント部分が泡立てたメレンゲ焼いた時のような膨らみがある)プリントやコンピューター刺繍(それも手刺繍やミシンを使い、手で振りながら刺繍したモノと違いデータ化した絵柄を自動で細かな柄まで再現できるようになった)などのロゴも好きですね。

このような手法はこのあたりの数年に集中して作られていて、意外とその後に存在しないということもあり、古着的な市場価値がついている訳でないのに結構とレアというところが自分にはたまらない。入り方も胸だけに収まらず腕まで繋がって入ってるなんてのもワクワクします。こんな入り方で発泡プリントなんて!と思うと「買うに決まってるやろ」ともう一人の自分が即決します。

それぞれの時代ならではの文字入れ手法や当時の流行のフォントなんかがあって、知っていくとソレを集めたくなる。知ったらあかんと思うけど、職業柄調べたり掘ってしまうねん。本当にロゴって沼やねんで。また、大阪のおばちゃん化してしまいましたが。

ロゴは、広告ツールであり個性を象徴するもの

 先ほどの話で出てきたパンツのサイドに入った「SUZUKI」のロゴはバイク用のパンツなのですが、「YAMAHA」や「HONDA」ももちろんあって、文字の入り方も時代によってプリントから切り文字、プラスチック製の文字もあるんです。プラスチック製は割らないように気をつけて穿かないといけません。本来はバイクに跨っている訳ですから足を色々な方向に曲げたり、足が他のものに接触することもないので割れる心配はないのですが、自分が日常着にしてしまっているので割れるような状況がどうしてもある。一部分を割ってしまったモノもありますが、割れた時は少しショックでした…。飴ちゃん舐めて心を落ち着かせましたが。

そもそもがバイクレース用で目立つためであり、スポンサーや車両提供するバイクメーカーを宣伝する為の道具という意味のパンツでもあるので、ロゴ入りであることに加えその時のチームカラーなのでとにかく派手なのです。「こんなん誰が普段に穿くねん」っていうやつです。「もちろん、自分穿きますよ!」ってなりますよね。派手な色使いにロゴが大きく入るんだから大好物ですもん。バイク乗りませんが…。

僕はそれを穿いて自転車や車、電車、バスに乗っています。バイクだけは乗っていません。バイクパンツを穿いてるのに。

バイクブランドのロゴの話はこのあたりにしておいて。そもそも洋服ブランドの大きなロゴ入りが好きか? どうなんだろうと自分で考えると、今の自分の頭の中では即答で「好きではない」と思っているのですが、少し振り返ってみると中学生の時のバスケットボール部で、学年で揃えたシューズは自分が決めた「NIKE」のビッグナイキというモデルで踵の上に大きくカマボコロゴが入っているものでした。はじめて買った車は、ハイラックスサーフで、2ドアでサイドに「SURF」って大きく文字が入っていてそれが気に入っていたな。

バッシュや車といったある程度きまった形で、大きくデザインを付け加えられないようなものに入る大きなロゴを、自分は特殊なデザインとして高い評価をしていたのかな?と考えます。子供の頃から白や黒よりも派手な色を選ぶ自分の本質から、ロゴの入らないシンプルなモノと大きなロゴ入りのモノを見せられたら大きなロゴ入りを選ぶのは必然ですかね。

ちょっと格好良く言いましたが、本当は関西人魂が子供の頃から大きなロゴ入りを選ばせた可能性が一番高いでしょう。これは重症です。かなりむかしからロゴ好きは始まっていました。

ロゴ好きは1日にして成らず。