お笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」のボケを担当している、平井“ファラオ”光に<偏愛>している物について語ってもらう連載企画。第四回目は、恐竜について語っていただいた。

 

歴史上の偉竜・ティラノサウルス

5PM Journalさんでの5カ月連続コラム、キティちゃん、ローリング・ストーンズ、上村松園と続いて第4回目は『恐竜』である。もう自分の主人格がどれかわかりません。

恐竜に関してはこれまであまりおおっぴらにアピールはしてこなかったが、実は大好きである。とはいっても最も熱を入れて好きだったのは子供の頃で、ある程度大人になってからはしばらく離れていた。それがここ数年になって(別にこれといったきっかけもなく)また再燃してきたという感じだ。

そもそも好きになったきっかけは、ある恐竜図鑑の表紙を見たときだったと思う。恐竜好きの間では知られた図鑑だと思うが、ティラノサウルスが凄まじい勢いで草食恐竜のパラサウロロフスに襲いかかろうとしている瞬間の絵で、その躍動感と迫力に少年ファラオは圧倒され、一目でティラノサウルスのかっこよさに惚れてしまったのだ。

ティラノサウルス。恐竜好きでなくても誰もが知っている歴史上の偉竜。それもはるか数千万年も前の生物である。
その巨体と圧倒的なスペック(スピードに関しては諸説あるようだが、五感の鋭さ、何よりアゴの力に関してはライオンの約10倍、ワニの数倍ともいわれている)で、地球の歴史上最強の陸上生物として知られている。このシンプルに『強い』という絶対的な個性。僕をはじめ多くのティラノサウルスファンの子供たちが憧れたポイントがそこだ。ゆえに僕の子供の頃のヒーローはウルトラマンでも仮面ライダーでもなく、ティラノサウルスだった。

 

現実とロマンの間

ちなみに恐竜といえば映画『ジュラシック・パーク』が有名だが、あれで恐竜のことを多少なり知ったという人も多いだろう。
個人的にもあれは最高だった。序盤にティラノサウルスを絶対的な恐怖の対象として描きつつも、最後はヒーロー的な役回りを与え王者としての貫禄を見せつけてくれた。あれぞ僕にとっての理想のティラノサウルス像である。
だが『Ⅲ』ではティラノサウルスよりも体の大きなスピノサウルスが登場し、まさかのティラノサウルスをタイマンで負かすというシーンがあったため、あれには少年ファラオもぶち切れた。僕のティラノがスピノなどに負けるはずがないと。
まあ当時の研究ではティラノサウルスが実は死肉を漁っていただけの弱い肉食恐竜だったのではないかという説が出ていたようで、その影響もあったのではないかといわれているが(今ではその説は薄くなり、やはりティラノサウルス最強説が濃厚となっており、またスピノサウルスも肉食ではあるものの、魚をメインで食していたといわれており、なによりアゴの力でいえばティラノサウルスよりも遥かに劣る。なのでタイマンでティラノサウルスがスピノサウルスに負けることなんて基本ないんだぞ)、子供心にやはり憧れのティラノサウルスが最強の座を引きずり降ろされるのが嫌だったのだ。

 

左がスピノサウルス

それに関連して少々脱線するが、常々よく思っていることがある。これは恐竜に限らず考古学全般に当てはまることだと思うが、現実とロマンの関係性についてである。

学者の皆さんは日々自分の専門分野の中で、解明されていない謎に対して答えを出すために研究を頑張っているのだと思う。
反面エンターテインメントの世界に生きる者としての目線で見ると、答えの出ていないところにこそ芸術のヒントが転がっていることが多々あるのだ。
例えばエジプトの3大ピラミッド。あれはいまだに建築方法や目的が明確になっておらず、学者の人たちは当然しっかりとした科学的分析に基づいて研究を進めているが、そうでない人たちは宇宙人の仕業と言ったり、何か神秘的な力と関連付けたりと、それぞれがそれぞれの尺度でピラミッドを使って想像力を膨らませている。その両者が対立することも当然あるが、個人的にはそんなぶっとんだ想像ができることも含めて面白いものととらえている。
つまり明確に答えが出ていないからこそそこに想像の余地があり、その想像から優れた映画や音楽、美術などの作品に発展していくことも非常に多いため、芸術界の盛り上がりという観点で見ると、答えを出すよりも想像(ロマン)の余地を残したままであってほしいという想いもあるのだ。学者の皆さんからすると無責任な意見に映るだろうが。

乱暴に言ってしまうと、仮にしっかりとした科学的分析に基づいたうえでティラノサウルスが実は最強じゃなかったという結論が出たとしても、もう最強でいいじゃん、その方がロマンあるじゃんというのが正直なところだったりする。

 

もふもふ姿に対する違和感

それと近い話で、結構前から実は恐竜には羽毛が生えていたという研究結果も出ており、それ以降、一部の恐竜は図鑑などでもモッフモフの羽毛姿で描かれることが多くなった。これもなかなかに衝撃だった。何しろ『ジュラシック・パーク』にも登場したあの凶暴なハンター、ヴェロキラプトルがいまや全身モッフモフのポケットモンスターのような姿に変貌してしまったのだから。ヴェロキラプトルといえばあの見るからに悪役感丸出しの見た目が最高にかっこよかったのに、あれでは実際幻滅したヴェロキラプトルファンも多かったのではないか。
幸い、我がティラノサウルスはまだ羽毛説はそれほど濃厚ではなく、生えていたとしても幼体のみだったともいわれているので、今でも僕の中ではあの爬虫類が巨大化したような禍々しさを保ってはいるが、そのティラノでさえも残念ながら羽毛姿で描かれているものも多くなった。そして申し訳ないが、羽毛姿で描かれているものの中でかっこいいと思えるデザインに出会ったことがない。どれもインディーズで支持されているメタルコアバンドのギタリストみたいな風貌なので(人間だとかっこよくても恐竜だと違う)、これに関しても勝手ながら、『かっこいい』というロマンを失くさせないでほしいという想いがある(それでいうと、意図は不明だが『ジュラシック・パーク』シリーズは今でもラプトルはじめ他の恐竜も爬虫類姿のまま描かれていて良い)。

現実とロマンの共存というのはなかなかに難しいものである。

 

もう実物と対面できないのが、恐竜

少々脱線したが、なんだかんだ恐竜は魅力的で、ティラノサウルス以外にも好きな恐竜は色々いる。
個人的に大好きなのがディプロドクスという草食恐竜で、30mにも及ぶ全長と異常に長い尾が特徴的で、その長い尾をムチのように振り回し痴漢(肉食恐竜)を撃退していたといわれている。しかも尾を振り回したときの速度は音速を超えるともいわれているのだ。『最強』に次ぐ男子が好きな言葉『音速』を出されちゃそりゃあ好きにもなる。
だいたい巨大な草食恐竜というのは、その体の大きさだけで既に充分な防御になるというのに、さらに音速の鞭という武器を持つことで一分の隙も見せないディプロドクスの『絶対に襲われたくない感』が僕は好きだ。

ディプロドクス

ヴェロキラプトルに近い仲間のデイノニクスも好きだった。彼らの仲間は体は小さいが知能が優れており、さらに最大の特徴である足の鉤爪が見るからに凶悪で、恐竜界屈指の狡猾なハンターとしての立ち位置を確立していたのだが、今ではヴェロキラプトル同様、羽毛まみれの小鳥ちゃんと化してしまった…。

他にも一度見たら忘れられないステゴサウルスや、どう見ても肉食恐竜並みの凶悪なルックスなのにところがどっこい草食恐竜のテリジノサウルスなど、個性的な恐竜がまだまだたくさんいる。

これだけ種類がたくさんおり、それぞれが独自の個性を持っているという面白さは、動物好きの人や昆虫好きの人の感覚とも同じところだと思うが、動物や昆虫と決定的に違うのは、恐竜は会いに行けないというところだろう。
やはり推しを生で見れる機会があるのとないのでは、ファンとしてのモチベーションに大きく影響すると思う。会いに行けたとしても骨だけなので、生きている姿を見る迫力にはやはり敵わない。
だからこそ『もしも実際に恐竜に会えたら』という想像のもと作られた『ジュラシック・パーク』シリーズや、図鑑などで恐竜をかっこよく描いているものは、子供たちに夢を与え、これからの恐竜ファンを育てるという点で意味があるのだと思う。

芸術という目線においても、恐竜という『文化』が今後どのように変化していくのか興味深く見守っていきたいと思っている。

全然関係ないけど、ロックンロール。