日本一…いや世界一泣き顔が似合う、熱き俳優・照英!
実は照英、幼い頃から魚に親しんできて、その中でも特に金魚が好きだということはご存知だろうか? 過去にはピラニアやうなぎを育て、なんとピーク時には数千匹の金魚を飼育していたというのだ。今回の記事では、そんな照英の魚への想いを皮切りに、金魚にまつわるお話をお聞きしました。
前編では、魚を好きになったきっかけから、らんちゅうとの運命的な出会いのエピソードをお届けします。

 

幼少期のヘラブナ飼育~釣り関連の仕事をするまで

僕は金魚が大好きなんですけど、その前に釣りと魚が好きだったんですよ。今回は金魚の話をする前に、好きになった経緯から語らせてください。釣りと魚を好きになったきっかけは、ヘラブナ釣りが大好きな祖父の影響。今じゃダメなのかもしれないけど、釣ったヘラブナを庭の池で飼っていたんです。そのヘラブナと家の水槽にいる金魚にエサをあげることが楽しくて楽しくて。手をパンパンって叩いたり人が近づくと寄ってきてくれたりして「魚って懐くんだ!」って、そこで知りました。

おじいちゃんと一緒に行くうちにどっぷりハマって、小学6年生くらいまでずっと釣りをしていました。でも途中からスポーツにのめり込んじゃって。それから何年か経って東海大学に進学したんですけど、湘南の海が近かったからまた同級生と釣りをするようになったんですね。で、これがまた不思議なもんで大学の陸上部の寮の「先輩が飼っているものを受け継ぐ」っていう伝統で、譲り受けた熱帯魚の飼育を始めたんです。同級生と釣りをしながら水槽飼育で生態を観察する、生きた教科書が目の前にある恵まれた環境で4年間を過ごしました。

巨大アカムツを釣り上げて、笑う照英

 

大学卒業して芸能界に入って、またしばらく釣りからは遠のいていたんですけど、趣味の欄に“釣り”って書いていたら船に乗って沖合で釣りをさせてもらえる仕事が入ったんです。そこから釣りの番組にも結構呼んでもらえるようになり、独学で魚のことを調べるうちにどんどん面白くなってきて、またどっぷり。魚って魚種によって模様も色も泳ぎ方もスピードも全然違う。生息している場所も淡水と海水の違いがある。淡水魚のことも研究してみたいなと思っていたときに渓流釣りに行く機会があって、そこでヤマメとかタナゴとかフナとか釣ったことで海とはまったく生態系が違うんだっていうことを実感したんです。そこから「もし魚が喋れるならいろんなことを教えてもらいたいなあ」っていう気持ちがどんどん膨らんでいきました。

 

過去にはピラニアやうなぎを育てたことも

魚って見えないところに生息してるじゃないですか。海でも川でも見えていたら捕まえられちゃうから、みんな隠れるんです。そして隠れているからこそ捕まえてみたい!と思うのがアングラーたちの性なんですけど、「この仕掛けで釣れなかったらちょっとラインを細くしてみよう。針も小さくしてみよう。餌をこうしてみよう」って考えていくのが釣りの楽しさなんですよね。一方、水槽飼育は本来見えないはずのものがずっと見られるんですよ。この個体はどんなふうに泳いで、なにを捕食して、どういうときに元気があって、なにに一番食いつくのか。ずっと検証しながら自分なりに模索し続けるのが楽しい。それが小さいころからいろんな魚種を飼ってきた理由です。

たとえばピラニアは、団体で飼うとどうなるんだろうと思って10匹くらいの稚魚から育てていったんですけど、大きくなってくると水槽が狭くなってくるんですよ。そうするとボスが生まれるんです。で、共食いを始める。一匹が噛みついたら、その一匹をみんなで攻撃して食べちゃうんです。最後はやっぱり、一番強いやつ一匹だけが残りました。

食べると美味しいけど飼ったらどうなるんだろうと思って、天然のうなぎを釣って飼ったこともあります。養殖は黒い皮に灰色がかった白い体なんですけど、天然のうなぎは金色なんですよ。すっごく鮮やかで、きれいなんです。知らない人に見せたら「これ病気ですか?」ってきっと言うと思います。でも、「いや、本当のうなぎは金色がかっているんですよ」って。そういうことをみんな知らないんですよね。そのうなぎは結局病気になっちゃったんですけどね、もちろん食べる勇気はありませんでしたよ。

興味が湧いてきたものに関しては、絶対逃したくないっていう気持ちが強いんです。なんでもやってみないと自分がなにを感じるのか自分自身でもわからないし、コメントを求められたときに自分の言葉でちゃんと述べられる大人にならなきゃいけないと思っていて。自分で自分を組み立てていく一環に魚の飼育があるような感覚でメダカ、ピラニア、うなぎ、アロワナと、これまでいろんな魚を飼ってきました。ただ、金魚だけは本当に難しい! 

 

愛媛県で“らんちゅう”と出会う

金魚との出会いは、今から10年ほど前。旅番組で愛知県に行ったとき、弥富市にある深見養魚場というところを飛び込みで訪ねたんですね。で、話を聞いてみたらそこは金魚の王様って呼ばれている“らんちゅう”の桜錦っていう品種を作出した深見さんという方のお宅だったんです。らんちゅうって、品評会の番付表で横綱になるような金魚なんですよ。日本でこれだけ愛でられている魚のことを僕は全然知らなかったなと思って一回触らせてもらったんです。だけど、大きくてボコボコした身体がちょっと気持ち悪くて、それが思わず態度に出てしまったんですね。

 

10年前に深見養魚場を訪れて

 

ロケ後の数日間、らんちゅうに抵抗があったこと、自分に失礼があったんじゃないかという後悔の念があって、いただいたお名刺に連絡を入れました。そのとき「らんちゅうという金魚がいることを知らなかった。飼ってみたいので購入させてください」とお願いしたら、深見さんが「値段がつかないようなものをあげるから、試しに飼ってみてよ」って言ってくださって、稚魚を50匹くらいバーっと送ってくれたんです。で、いざ飼い始めたら面白くて面白くて。

成長していく過程ももちろんですが、調べてみたら自宅で繁殖ができると。しかも「この色とこの色を掛け合わせたら、こんな変わった色が出る可能性がある」っていうじゃないですか。国内で認定されている品種は今35種類ほどと言われているんですけど、これからまだまだ新品種が出る可能性は大いにある魚なんですよ。ならば自分も新品種「照英」を作出して図鑑に載せたい!という夢を追いかけているところです。ただ新品種の作出は業界トップのプロでも15年くらいかかるという偉業。国際的な学会で発表されることなので、チャレンジしている人はいっぱいいるのが現状。同じ形・顔・ヒレのものを安定作出するというのが非常に難しいんです。

金魚界には品評会っていうコンテストみたいなのものがあるんですけど、それで賞をとろうと思うといい金魚を2、3匹だけ残して、そこからまた繁殖させていい個体を残して……っていうのを繰り返すんです。だから、2,000匹3,000匹は申し訳ないけど淘汰するっていうのが実は金魚界に見え隠れしている現状。いい金魚を育てようと思ったら、もう本当に1/1000とかの確率でしか生まれてこないって言われてるんですよ。

しかもこれ、ズバリ言うと飼育すること自体が面倒くさくて大変なんです。労力も時間もお金もすっごいかかるし、場所も必要になってくる。ひとつの水槽で1、2魚種飼うならまだしも好奇心が増してくると、あれもこれも飼ってみたい!ってなっちゃうんですよ。そうすると水槽がどんどんどんどん増えていく。水が汚れたら病気になるし、きれいな酸素を吸わせてあげなきゃいけない。それを管理し続けるのって一言でいうと面倒くさいんです。

 

譲り受けた和金200匹

 

じゃあなんで飼うのかっていうと、夢でもあるし、やっぱり命なんですよね。一度飼うと愛着が湧いてくるんです。で、愛着が湧いてくると見放せない。自分で言うのもヘンだけど、優しさが出ちゃってんのかな。ゴールが見えないわけじゃないんだけど、俺なにやってんだろうって思うときがたまにあるんですよね。実際、死んじゃう個体も結構多いし、ちょうど3日前30匹くらい害獣に食べられちゃって今50匹くらいまで減っちゃったんですけど。もういらねえなと思えば誰かに全部あげちゃえばいいじゃないですか。放流は絶対しちゃいけないことですから、たとえば熱帯魚屋さんに引き取ってもらうとかね。そうすればラクなんだけど、さっき言ったみたいに手を叩けば寄ってきてくれたりするのを知っているし、どの子も平等に大切にしてあげたい。魚の飼育の原点には、そんな想いがあります。

 

Text by 野中ミサキ