「決め手に欠ける」をクリアする香り
―香水は海外に比べて国内市場が非常に小さいと伺ったことがあります。いわば茨の道に西田さんが足を踏み入れたのはなぜでしょうか。
西田:たしかに、香水を使う人は20~30代で3割程度と言われています。この数値は少ないと感じると思いますが、ボディソープ・石鹸などのケアアイテムや柔軟剤など「香り」を打ち出した商品は多く存在し、派生市場はとても大きいと考えています。実際にパーソナライズヘアケア「MEDULLA」においても、「香り」はとても重要なポイントというユーザーデータが出ています。
また、「日本人は毎日入浴する文化があるから海外に比べて香水の必要性が低い」と言われていますが、これってむしろ逆だと思うんですよ。匂いに敏感な国民性ゆえに、体臭を気にして清潔さを保つのではないかと。だとしたら、むしろ自分にぴったりなフレグランスがあれば幸せになれる人も多いはずです。
―となると、香りに特にこだわっている人に使っていただくのがlove passport milaの目標なのでしょうか?
西田:いえ、私たちは「この人たちに使ってほしい」など区切ってはいません。パーソナライズだからこそ、どんな方にも使ってほしいですから。ただ、love passport milaを使う方々の「傾向」は明確にあります。それは、「決めきれない人」です。
西田:例えば百貨店でフレグランスを試した際、「あ、良い香りだな」と思っても、「これが一番自分に合っている!」と決めることはかなり難しいです。さらに、「その場で感じた良い香り」と「自分のイメージに合っている香り/ずっと包まれていたい香り」が一致するとは限りません。さらに言うなら、その時の体温や鼻のコンディションで香りの感じ方は違いますし、「自分の元々の匂いとフレグランスがまじりあった匂い」は自分では検知できません。「フレグランスが自分に合っているかわからない」という方が多いのは当然です。
―自分に合っているか判断する決め手に欠けるわけですね。でも、私の周囲には「香水にいい印象を抱いていないから使わない」という友人もいますね……
西田:わかります。一定数いらっしゃいますよね。香水が避けられてしまうのは、「香水が”キツい”」といった表現やイメージの独り歩きが原因になっている、と私たちは考えています。
―独り歩き、ですか。
西田:満員電車やエレベーターで、「この人の香水かなり香るな」と思ったことありませんか? 毎日入浴する文化がない海外の香水はシャープな香り立ちのものが多く、この「かなり香るな」が「香りがキツい」と表されることで、マイナスの事柄になるんです。
マイナスになると、今度は「自分はそうなりたくない」という思考になり、そこにフレグランスならではの「自分の香りがどれだけ匂っているかわからない」特性が合わさって、香水離れへと繋がります。
そういった方にこそ一度love passport milaを使ってみていただきたいです。好みの香りに包まれると自分を好きになれる、と実感できると思うので……
―香りに敏感であればあるほど、パーソナライズしてくれる人にも専門性を求めてしまう気がしますが、オンライン上でカウンセリングをしてくれるmilaは「専門家!」といったキャラクターではありませんよね。
西田:先ほどお話しした「自分で決めきれない人」が、心から頼れる存在にしたかったんです。無機質な専門家だと、何だか安心して自分をさらけだせないといいますか……それに、香りには詳しくても、自分自身について詳しくない人がおすすめする香水って、本当に自分に合っているのかわからないと思うんです。知らない専門家よりも、距離の近い友人が勧めてくれた香水の方が、安心できませんか?
だから、旅好きの頼れるお姉さん風のアドバイザーとしてmilaのキャラクターを定めました。
―LOVE PASSPORTは元々FITSのロングセラーブランドですよね。そこに突然milaというキャラクターが登場したのはどういった経緯だったのでしょうか。
西田:私たちSpartyは、その人らしい美しさ・魅力を引き出すためにパーソナライズサービスを提供しています。その中で、好きな香り・自分に合う香りをまとう生活は、一人ひとりが自分らしく生き生きと輝いて暮らせることに繋がると考えていました。だからシャンプーやスキンケアブランドでも香りにはこだわっていたのですが、もっと香りに軸足を置いたフレグランスを開発したいと常々思っていました。そこで出会ったのがLOVE PASSPORTです。
西田:LOVE PASSPORTは、30年以上の歴史を持つFITSがノウハウを活かして生み出した、初めてのオリジナルブランドです。ブランドとしては約20年にもわたって「使う人の気持ちに寄り添う、幸せへのパスポートとなる香り」を目指されてきました。その色褪せない想いが時空を超えて、私たちの目指す世界観と一致した結果、このコラボレーションが実現しました。FITSのフレグランスづくりのノウハウと私たちSpartyのパーソナライズ技術・こだわりが合わさり、唯一無二のブランドになったと感じています。
milaと一緒に、自分を好きになる
―これから先、love passport milaが形作っていきたい未来とはどのようなものなのでしょうか。
西田:私たちは、香りをベースとしたプラットフォームを創りたいです。もちろん香りは種類が無限にあるといっても過言ではありませんし、プロダクトの種類もたくさんあります。スキンケア・柔軟剤・ディフューザーなど……香りがカギとなってくるものを数えるとキリがありません。大げさかもしれませんが、香りを土台にすればあらゆる生活シーンを支えることができると思っています。
また、ユーザーに対して「フレグランスを使えばもっと生活が楽しくなるよ」というメッセージは伝えていくつもりです。約7割もの人がフレグランスを使えていないのはもったいないですから。
―メッセージを伝えていく、と言いますと?
西田:商品を通じて想いを伝えていく、ということです。特に、社会人でフレグランスを使ったことのない方にはアプローチしていきたいです。
メイク・ファッション・フレグランスにはどれもエントリーモデルのようなものが存在し、勝手のわからないジャンルでもある程度は自分で探求できると思うのですが、エントリーモデルって大体学生向けなんですよね。だから、学生と同じものを使いづらい社会人にとってはエントリーモデル自体が手を出しづらい存在になっています。そして、学生の頃にトライしてみた人が比較的少ないフレグランスは、その課題が特に立ちはだかるわけです。
―確かに、香水って「○○から始めればいい」みたいな位置づけのものがパッと浮かばないですね。
西田:しかも、これは少し不思議なのですが、香水ってやけにパーソナルなものとして扱われがちなんですよね。メイクやスキンケアで「何使ってるの?」と尋ねるよりも、「何の香水使ってるの?」と言うハードルは高くて。「体臭」と密接にかかわっている点が要因になっていると思うのですが……。milaを開発する時も、いい香りのフレグランスを使っているメンバーに「何使ってるの?」と聞いたら少しびっくりされました(笑)
西田:その一方で、記憶のトリガーにはなりやすいですよね。「あ、あの人の香りだ」と記憶したり、思い出したり。「このアイシャドウ、あの人が使っていたな」とは思いませんが、「この香水、あの人が使っていたな」と思った経験はあると思うんです。まさに、匂いが人を形成するファクターになっている証ではないでしょうか。
―人を構成する大事な要素を変えることって、むしろ「自分らしさ」から遠ざかるのでは……と思ってしまったのですが、そういうわけでもないのでしょうか?
西田:milaが応援する「一人ひとりの”自分らしさ”」は、自分を憧れの人へ無理やり寄せた自己実現ではありません。主に海外を中心に、スターだったり、アイドルだったり、特定の誰かをイメージした香水が最近増えているのですが、その人に憧れて香水を使う方がいらっしゃいます。それも素敵ではあるものの、憧れの人に寄せるためにそれぞれの「自分らしさ」にフィルターをかけては、個性が消えてしまいます。
私たちがしたいのは、そういった形での「自分らしさ」の応援ではありません。自身の「好き」が形になった香りを身にまとって、褒められて、自分のことを肯定できる。そんな道を歩んだ方が、本来の自分を隠さず幸せになれると思いませんか? こういった自分らしさにたどり着ける旅へ、milaはあなたを連れ出します。
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