80年代のバブル期、若者を中心に爆発的なブームを巻き起こした<スキー>。いまでも冬の定番アクティビティとして楽しまれているが、『もっともっとスキーの楽しさを知ってほしい!』と伝えたくてたまらない人、それは編集者の渡邊卓郎。第三回は、自身が制作するスキーのフリーマガジン『SKI CLUB』に込めた、純粋なスキー愛を語ります。

スキーって楽しそうだな。今年こそ行こうかな?と思ったまま冬の間に結局一度も滑りに行かなかったという方は多いのではないでしょうか?
スキーってやっぱりハードルが高いと感じてしまいますよね?「雪が降る時期しかできない」「そもそも雪山への移動が大変そう」「スキー道具って高そう」「何から手をつけていいかわからない」……。ハードルが高く感じるのはそんな理由でしょうか。全てその通りだし、ごもっともだと思います。

スキー人口は1990年台初頭をピーク(1993年で約1,770万人)に減少傾向が続き、2020年にはスキーとスノーボードを合わせて約430万人(内、スキーは約270万人)という状況です。インバウンドのスキー客は増加傾向ではありますが、日本におけるスキー人口は減り続けているというわけですね。スキー人口が減ると当然スキー場の経営も困難になります。毎年、スキー場閉鎖のニュースなどを見聞きするかと思います。と、なんだかマイナスのことばかり述べてしまったのですが、とにかく、このままだと日本のスキーカルチャーが無くなってしまうのでは?と危機感を覚えたのです。自分が愛するスキーカルチャーが衰退していくのは寂しさしかありません。

そんな時に、長年アウトドア業界にいてスキーギアのプロモーション業などもしているプロデューサーの友人の熱い想いがきっかけになって「スキーの雑誌を作ろう!」ということになり、スキーを愛する友人の編集者も誘って雑誌作りが動き出したのです。僕らにできることで、微力ながらスキーカルチャーを盛り上げたい!と思ったわけです。

そのためには、自分たちが感じているスキーの楽しさ、雪山の素晴らしさを伝えるのが一番だと思いました。でも、先に述べたようにスキーに対するイメージのハードルの高さ問題って実際にあるんです。そんなスキーや雪山へのハードルを少しでも下げられたらと思って、スキーの世界の入り口を広げるための存在になるように雑誌のコンセプトを作っていきました。

雑誌はフリーマガジンで「SKI CLUB」といいます。雑誌のコンセプトはシンプルにこれです。「スキーの楽しさとかっこよさを伝えたい!」いいでしょう?だって、まずは楽しそうじゃないと、やってみようなんて思えないですもんね。

「SKI CLUB」には、ものすごいパウダーを飛ばしているようなライディング写真や、バックカントリーでとんでもない冒険をしている写真はほとんど出てきません。そんな世界ばかりを見せても、多くの人は「私とは関係ないや」って感じてしまいますもんね。その世界も確かに最高にかっこいいけれど、「SKI CLUB」がまず伝えたいのは、スキーって楽しくてかっこいいんだっていうこと。僕らはスキーの世界への入り口を広げたいのです。

「SKI CLUB」には、スキーを愛する人たちの、溢れんばかりのスキー愛が詰まっています。もはや溢れ出ちゃっているかもしれません。そして、何より僕たちがこだわったのがフリーマガジンであること。これってものすごく重要なことだと思うんです。雑誌やジンは誰でも作ることはできます。でも、読まれないと意味がないんです。

書店で専門誌を手に取って、お金を払って買ってもらうなんて、なかなか険しい道のりですよね。僕だってやったことはないスポーツの専門誌を買うかと言ったら、なかなかレジまで辿り着かないなあと思うんです。
でも、フリーマガジンだったらとりあえずは手に取ってもらえますよね?それで、すこしでも読んでくれたら嬉しいし、スキーって楽しいかも?なんて思ってもらえたら幸せです。「SKI CLUB」を読んでスキーに行ったよ、なんて言う話を聞いたりできたら、もう最高すぎます!

 

 

毎年冬の入り口に発行している「SKI CLUB」も2023年12月の発行号で3号目になりました。おかげさまでとても好評で、「うちの店にも『SKI CLUB』を置きたい!」という連絡を多くいただいたりもします。サポートしてくださっている広告主さんや配布店さんもスキーと雪山を愛する気持ちは同じなのだと感じています。
なにせフリーマガジンですから、印刷費や制作費を捻出するのはそんなに簡単な話ではありません。

予算を気にしなくていいのなら、本当はもう少しいい紙を使って判型を大きくしたいよね、とは仲間達と話していますが、なかなかそうもいきません。それでも、小さな判型ならではの表現をして楽しい誌面作りを目指しています。
ありがたいことに「『SKI CLUB』をサポートしたいから一緒に記事を作りましょうよ」と言ってくださるクライアントさんが現れたり、取材を依頼する方も「スキーのためならいつでも!」と快く引き受けてくれます。「『SKI CLUB』を読んで、今シーズンは初めてスキーをやってみましたよ」という声も何人からもいただきました。みなさんのスキー愛、温かいし最高です!

こんなに楽しいスキーの魅力を伝えるためには、とにかく僕らが誰よりもスキーを楽しまないと!と思っているので、楽しく作らせてもらっています。

1号目から毎回登場してくれていて、勝手に“ミスター・スキークラブ”と呼ばせていただいている俳優の松田翔太さんは「真っ白で美しい雪山の無音の世界が何よりも心地良いんです」と、雪山の魅力を語ってくれました。

また、エベレストでのスキー滑降挑戦など、数々の伝説的冒険をしてきたスーパー・レジェンド・スキーヤーである三浦雄一郎さんは「SKI CLUB」にスキーと雪山の魅力をこう語ってくれました。「雪というのはもともと雲なんです。雲が変身して雪になります。だからスキーは雲の上で遊んでいるような感覚でもあります。雪の量、雪の質、日本は世界で最高の雪の国です。最高の雪山がたくさんあります。」

ね?こんなことを聞いていると冬は日本の雪で遊ばないと勿体無いし、やっぱりスキーって楽しそうだと思いません?この冬こそスキーへ!雪山へ!すぐに出かけましょうよ。