もくじ

1. 汗とは?

2. 汗をかく原因は3つ

3. あまりにも汗が多い場合は多汗症の可能性も

4. 汗のかきすぎを防ぐためにできること

5. 汗をかいたときの対処方法

6. 汗対策をして快適な日常生活を送ろう

汗とは?

汗ばむ人の肩

汗とは、汗腺(かんせん)と呼ばれる管で作られる透明な体液のことです。汗腺は、次の2種類に分けられます。

 ● エクリン汗腺

 ● アポクリン汗腺

エクリン汗腺は全身に広く分布しており、主に体温を下げる役割を果たします。身体の部位により密集度が異なり、手のひらや足の裏に多く集まっています。アポクリン汗腺は脇や陰部など限られた場所にのみ存在しており、フェロモンと関連性があると考えられています。

エクリン汗腺から出る汗の主成分は水分です。ほかにも、塩化ナトリウム、カリウム、亜鉛などの電解質やミネラル、尿素、乳酸、使用した薬剤などの老廃物がほんのわずかに含まれています。

わたしたちにとって汗をかくことは身近な生理現象ですが、実は汗をかく動物というのは、それほど多くありません。犬やネコ、カバなども汗をかきますが、滝のように大量の汗が出るのは人間と馬くらいだといわれています。

たとえば、犬は呼吸によって体温を調整します。犬が「ハアハア」と舌を出しながら短く息をしているときは、汗をかけない代わりに、呼吸によって熱を逃しているからです。

 

いい汗と悪い汗の違い

汗の原料は、体内に存在する血液です。ただし、血液には生体機能を維持するために必要な成分が豊富に含まれているため、赤血球などを取り除いた「血漿(けっしょう)」を取り出して、汗を作ります。

血漿のなかにもミネラルなどの成分が残っているため、汗腺が水分だけをろ過することで、必要な成分を体内に残します。

「いい汗」は、ろ過機能が正常に働いているときに出る汗です。電解質やミネラル、老廃物が少ないので、限りなく水に近く、サラサラとしています。

一方、ろ過機能が衰えていると不純物の割合が高まった「悪い汗」をかきやすくなります。悪い汗は、ねばねばしており、においも強くなる傾向です。また、ミネラルなどの栄養素が排出されてしまうことで、夏バテや熱中症などの体調不良を引き起こすリスクも高まります。

汗をかく原因は3つ

小鉢に山盛り唐辛子

汗をかく原因には、大きく次の3つがあります。

 ● 温熱性発汗

 ● 精神性発汗

 ● 味覚性発汗

ここでは、汗が出るケースや汗をかく部位、汗腺の種類を原因別に解説します。汗をかきやすい人の特徴についても触れているので、汗で悩んでいる方は、当てはまる項目がないかチェックしてみてくださいね。

 

温熱性発汗

上昇した体温を下げるためにかく汗です。温熱性発汗では、全身にあるエクリン腺から汗が分泌されます。激しい運動などで体温が上昇すると、脳の視床下部にある体温調節中枢から発汗の指令が送られます。

皮膚の表面に出てきた汗が蒸発することで、身体から熱が奪われて、体温が下がります。運動中の発汗量は1時間に2Lを超えることもあるため、脱水症状を起こさないようこまめな水分補給が欠かせません。

暑い日や発熱時などに、体温を調整する目的で出る汗も温熱性発汗です。夏の炎天下では、10分歩いただけで約100mlの汗をかくといわれています。体温を1度下げるために必要な汗の量の目安は、体重70kgの人で約100mlです。

 

精神性発汗

緊張や不安など、精神的なストレスを受けたときにかく汗です。精神性発汗では、エクリン腺とアポクリン腺の両方から汗が分泌されます。

「手に汗を握る」「嫌な汗をかく」といった意味合いで用いられるのは、こちらの精神性発汗です。手のひらや足の裏、脇などの限られた部位から、不純物を多く含む悪い汗が出てきますが、詳しいメカニズムはまだ解明されていません。

足裏や脇の汗が気になるときは、自分でも気が付かないうちにプレッシャーを感じている可能性があります。自律神経の乱れも精神性発汗につながるため、ゆっくりと休息をとり、心身をリラックスさせましょう。

 

味覚性発汗

辛い食べ物を口にしたときにかく汗です。味覚性発汗では、エクリン腺から汗が分泌されます。辛み成分が口内を刺激することで、額や鼻、頭から噴き出るように汗が出てきます。

人間の舌には、味蕾(みらい)と呼ばれる器官があり、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味を感知します。この味蕾に、辛味は含まれていません。わたしたちは、辛味を味覚ではなく「痛覚」「温覚」として受け取っています。

極端に辛い物を食べると、脳が辛味を熱さと錯覚し、体温を下げるために大量の汗をかくといわれています。口内の刺激によって発汗するため、食べ終わると自然と汗もひいていきます。

 

汗をかきやすい人の特徴5つ

温熱性発汗、精神性発汗、味覚性発汗の3種類の原因があることを踏まえて、次の特徴がある人は汗をかきやすいと考えられます。

 ● 運動習慣があり代謝がいい人

 ● 運動不足で脂肪が多い人

 ● ストレスが溜まっている人

 ● プレッシャーを感じやすい人

 ● 辛い物が好きな人

運動習慣があり基礎代謝が高い人は、いい汗をたくさんかくことができます。反対に運動不足の状態が続くと、汗腺の機能が衰えて悪い汗が大量に出てきます。

ストレスが溜まっている人やプレッシャーを感じやすい人も、汗をかきやすい傾向です。辛い物が好きだと、汗をかく頻度が高くなるため、ちょっとした刺激にも身体が反応しやすくなります。

あまりにも汗が多い場合は多汗症の可能性も

口に手を当てる人

汗っかきは体質ですが、あまりにも汗が多い場合は多汗症を疑ってみましょう。症状が重い場合は、疾患として認められ、病院で治療ができるケースもあります。多汗症に悩んでいる方は、まず多汗症についての知識を身につけることが大切です。多汗症の種類や原因を知ることで、対策が講じやすくなります。

多汗症は、エクリン汗腺の機能が異常に高まってしまうことで引き起こされます。病気や薬など原因が明らかなものは「続発性(ぞくはつせい)多汗症」、原因が断定できないものは「原発性(げんぱつせい)多汗症」と呼ばれています。

ここでは、多汗症かどうかを判断できる簡単なチェック項目も用意しているので、気になる方はぜひ参考にしてみてください。

 

多汗症の種類と原因

多汗症は、「全身性多汗症」「局所性多汗症」の2種類に分けられます。全身に大量の汗をかく場合は全身性多汗症、特定の部位で多くの汗が出てくる場合は局所性多汗症となります。局所性多汗症は、部位によってさらに細かく分類されます。

病名      読み方              部位                    
掌蹠多汗症しょうせきたかんしょう手のひらと足の裏
手掌多汗症しゅしょうたかんしょう手のひら
足蹠多汗症そくせきたかんしょう足の裏
腋窩多汗症えきかたかんしょう

脇から大量の汗が出る腋窩多汗症は、ワキガと混同されやすいですが、汗腺の種類が異なります。ワキガは医学的に腋臭症(えきしゅうしょう)と呼ばれ、アポクリン腺からの分泌が影響しています。一方、腋窩多汗症は全身に分布するエクリン汗腺からの異常分泌が原因です。ただし、腋窩多汗症と腋臭症を併発している場合は、大量の汗と強いにおいに悩まされることになります。

 

多汗症かどうかを簡単にチェックしてみよう

次の項目に複数該当する人は、多汗症の可能性があります。

 ● 気温や運動量に関係なく大量の汗をかくことがある

 ● 汗をかくことで日常生活に支障をきたしている

 ● 足や脇のにおいが気になる

 ● 手のひらが汗ばんでいることが多い

 ● 家族や親戚に多汗症の人がいる

これらは、あくまで簡単なチェック項目のため、多汗症の疑いがある場合は皮膚科や形成外科で医師に相談してみましょう。専門医の診断を受けることで、外用薬や内服薬を使った治療も可能になります。

汗のかきすぎを防ぐためにできること

入浴中の女性

原因が断定できない原発性多汗症の場合は、制汗剤を使用する、食生活を改善する、運動を習慣づけることで多汗症が予防できるといわれています。

また、ストレスやプレッシャーによる発汗の抑制には、自律神経を整えることも効果的です。ここからは、汗をかかないようにするためにできる具体的な方法を紹介します。

 

制汗剤を使用する

脇からの汗が気になるときは、制汗剤の使用がおすすめです。塩化アルミニウムが含まれている制汗剤は、汗腺に作用し、汗の通り道を塞ぐ効果があるとされています。汗の収まり方には個人差がありますが、制汗剤はにおいだけでなく、汗の量にもアプローチできます。

同様に、手汗が気になるときは、塩化アルミニウムが含まれているハンドクリームを使うと、さらさらした状態を維持しやすくなります。ただし、体質に合わなかったり、使いすぎたりしてしまうと、皮膚の炎症を引き起こすため、注意が必要です。

 

食生活を改善する

食生活が乱れると、交感神経が優位となり、悪い汗をかきやすくなります。辛い物を食べすぎたり、お酒の量が多かったりするのも、好ましい状態ではありません。朝昼晩しっかり食事をとり、たんぱく質や野菜もバランスよく摂取しましょう。

喫煙や睡眠不足も多汗症に悪い影響を与える可能性があります。たばこに含まれるニコチンは汗腺を刺激し、活発にしてしまう恐れがあります。睡眠不足は自律神経の乱れにつながるため、最低でも6~8時間の睡眠時間を確保するようにしましょう。

 

運動を習慣づける

運動を習慣化するのも、大量の汗をかかないようにするための効果的な方法です。毎朝のウォーキング、週末のジョギングなどで適度に汗をかくことで、汗腺の機能が鍛えられます。

身体を動かすことである程度の汗は出ますが、「どれくらいの汗をかけば体温が下げられるのか」がわかっているので、体温調節中枢から適切な指令が送られます。多汗症はエクリン汗腺からの異常分泌が原因となるため、毎日少しでも身体を動かして、汗をかき慣れておくことが大切です。

 

入浴で汗腺機能を鍛える

入浴でも汗腺機能は鍛えられます。入浴前にコップ1杯の水を飲むと、発汗を促すことができます。ゆっくりお風呂に入ることで、心身がリラックスして、副交感神経も優位になります。

入浴後は脱水症状やのぼせを防ぐためにも、水分補給を忘れないようにしましょう。入浴後の汗が気になる場合は、クールダウン浴を試してみてください。クールダウン浴とは、体温より低めの33~34℃のお湯で半身浴することで、体温を緩やかに下げていく入浴法です。

クールダウン浴について詳しく知りたい方は、環境省がサポートする国民運動「COOL CHOICE」のサイトもご覧ください。

出典:【COOL CHOICE】湯上がりすっきり! 汗ダラダラにならない「クールダウン浴」
湯上がりすっきり! 汗ダラダラにならない「クールダウン浴」|COOL CHOICE 未来のために

 

病院で汗をかかないように治療を受ける

汗をかくことで日常生活に支障をきたしている場合は、病院で治療を受けることも可能です。続発性多汗症であれば、発汗の原因となる病気の治療を行うことで、汗が抑えられるかもしれません。

原因が断定できない原発性多汗症であっても、外用薬で汗腺を塞いだり、内服薬で汗腺の働きを抑えたりする治療が行えます。日帰り手術や注射で汗を抑える方法もあるため、根本的な治療に興味のある方は、病院で医師に相談してみましょう。

汗をかいたときの対処方法

水入りグラスを持つ手

わたしたちの身体は汗によって体温を調整し、健康を維持しています。汗をかくことはごく自然な生理現象で、まったくかかないようにはできません。

ただし、汗をかいたまま放置していると、肌の乾燥や脱水といったトラブルを引き起こしやすくなります。汗をかいたときの対処法を知り、適切な行動を心がけましょう。

 

すぐに拭き取る

汗は蒸発することで体温の上昇を防ぎます。このときに必要な水分まで奪われてしまうと、肌が乾燥しやすくなり、さまざまな肌トラブルを引き起こします。あせもや汗かぶれを防ぐには、汗をかいたらすぐに拭き取るのが効果的です。

だらだらと流れ落ちるような汗は乾いたタオルで拭き取ってもよいですが、じんわりとした汗は触れたタオルを使いましょう。水分を含んだタオルで拭くことで、体温を下げる働きをサポートできます。

 

正しく水分補給をする

汗をかいたら、正しく水分補給することもポイントです。適切なタイミングで水分をとらないと、脱水症状に陥り、頭痛やめまいなどの不調があらわれます。

軽い運動や入浴後の水分補給は、胃腸への負担が少ない常温の水がおすすめです。激しい運動をしたときや、大量の汗をかいたときは、体内の塩分濃度が下がっているため、水分だけでなく塩分も意識的にとりましょう。

汗対策をして快適な日常生活を送ろう

笑顔の男性

汗をかく原因には、温熱性発汗、精神性発汗、味覚性発汗の3つがあります。運動により全身から汗が出たり、緊張して手汗をかくことは、当たり前の生理現象ですが、大量の汗に悩まされている場合は多汗症を疑ってみましょう。

汗が出る原因により対処法は変わってきますが、運動や入浴により汗腺機能を鍛えることで、汗の質が変化します。制汗剤やタオルなどのアイテムを活用しながら、快適な日常生活を送ってくださいね。

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ヴィヒタタオル | 5pm Journal

参考

【J-Stage】意外な汗の免疫機能とその制御

【健康長寿ネット】運動の良い汗と悪い汗

【広報誌 南東北】汗について知ろう

【はじめての美容医療】【医師監修】汗をかかない方法ってあるの?!まずは仕組みを解説

【HARTWELL】汗かきの原因と対策|制汗グッズを選ぶときのポイントも解説

【RHOTO】「多汗症」の原因、予防法・対処法について

【kracie】汗っかきは多汗症!? 多汗症の見分け方と漢方でみる「あなたの汗タイプ」の原因とおすすめ食べ物

【おうち病院】多汗症の診断方法は?流れや予防方法などについても解説

【d program】汗をかいたときの対処法

【トリム ミズラボ】汗をかいたら水分補給!汗をかいたときの正しい水分補給の仕方とは