もくじ

1.金継ぎとは

2.金継ぎに挑戦してみよう!

3.金継ぎキットを選ぶ際のポイント

4.金継ぎのやり方・手順

5.金継ぎワークショップで体験してみるのもおすすめ!

まとめ

金継ぎとは

金継ぎしたお皿

ここでは、金継ぎの歴史や魅力を紹介します。金継ぎは日本に古くから伝わる技法です。大量生産・大量消費が定着した近年において、ものを大切にする金継ぎの考え方は、日本にとどまらず世界中から注目されています。

 

金継ぎは伝統的な修繕技法

金継ぎとは、欠けたり割れたりした陶磁器を、漆で修繕して金粉で仕上げる伝統的な技法のことです。金継ぎにより傷跡は美しく彩られ、唯一無二の個性としていっそう器を慈しめるようになります。

金継ぎの歴史の始まりは、はるか縄文時代にまでさかのぼります。ただし、縄文時代には漆による接着技術が誕生したにすぎません。本格的に金継ぎに金粉が使われ出したのは、茶の湯文化が浸透した室町時代とされています。当時は茶器が非常に大切に扱われていました。破損した器を金継ぎして長く使う風習は、日本文化特有の侘びさびの心を体現しています。

近年、金継ぎのイベントやワークショップが各地で開催され、海外からも金継ぎが注目されています。

 

金継ぎの魅力

「ものを大切にする」意識の高まりから、近年の金継ぎはブームといえるほどの注目を浴びています。金継ぎの魅力は、単なる修繕にとどまらないこと。漆を使ってつなぎ合わせたり欠けを埋めたりしたうえで金粉により装飾を施し、アートのような価値を生み出すことこそが、金継ぎの本質です。

大量生産・大量消費が当たり前となった近年において、1つのものを大切に長く使うことに魅力を感じる方が増えています。サステナブルな暮らしに重きをおく方々にとって、金継ぎは興味深い技法といえるでしょう。

金継ぎの魅力について、詳しくはこちらも参考にしてください。

直すだけじゃない、“金継ぎ”って思ったより自由。

金継ぎに挑戦してみよう!

湯呑を金継ぎ

金継ぎでは細かな作業を繰り返し、時間をかけて器を修復していきます。きれいな完成品ができるように、適した道具や材料を用意しましょう。金継ぎに使う道具や材料と、作業する際の注意点を解説します。

 

金継ぎに必要な道具

金継ぎには、主に以下の道具が必要です。

 ● 耐水ペーパー(やすり)

 ● パレット

 ● へら

 ● スポイト

 ● 筆または竹べら

 ● マスキングテープ

 ● はさみ、カッター

 ● 毛棒または真綿

 ● ビニール手袋

 

耐水ペーパー(やすり)は、割れ面の角を取り釉薬を落とすために使います。パレットとへら、スポイトは、修復に使う漆を練るために使います。

細かなヒビ・欠けを修復する際は、細めの筆で漆を塗りましょう。一方、割れを接着する際は竹べらを使って広い面積に漆を塗ります。マスキングテープは、割れた器を漆で接着するときに位置がズレないよう固定する際に使います。

仮に漆がはみ出た場合でも、はさみやカッターを使えば削ぎ落とすことが可能です。漆を塗り終わったら、毛棒または真綿で金粉を蒔きます。

詳しくは後ほど解説しますが、漆には肌をかぶれさせる成分が使われています。肌を守るために、必ずビニール手袋をはめて作業しましょう。

 

金継ぎの材料

金継ぎの主な材料を、以下にまとめました。

 ● 水

 ● 生漆(透漆)

 ● 小麦粉

 ● 木粉や砥粉

 ● 色粉、色漆

 ● 金粉、銀粉

 

生漆(透漆)とは、漆の木から細粒した漆液から不純物を取り除いたものです。水と生漆、小麦粉を混ぜ合わせると、破損した器をつなぎ合わせるためのペースト(麦漆)ができます。また、木粉や砥粉を麦漆に混ぜ合わせると、大きなヒビ・欠けを埋める際に使う刻苧(こくそ)ができます。

色粉は漆に色を付けるための粉で、色漆は始めから色が付いた漆です。金継ぎでは漆を何度も塗り重ねるため、進行状況が分かりやすいように色が付いた漆を使います。

私がワークショップで金継ぎしたときは、赤い色粉の「弁柄」を生漆に混ぜ合わせました。作業中は弁柄独特の臭いが気になりましたが、完成品には臭いが残らないので安心してくださいね。

金粉や銀粉は、修繕に使った漆を隠すように蒔き、器を彩ります。器の色や好みに応じて、金粉、銀粉を使い分けるとおしゃれに仕上がりますよ。

 

金継ぎをするときの注意点

金継ぎでは、生漆を使って漆のペーストを作ります。生漆には、皮膚をかぶれさせるウルシオールが含まれているため気をつけてください。直接触れた指先や手の平などはなんともなくても、漆が付いた手で顔や体を触ったときにかぶれる場合もあります。

生漆や漆のペーストが肌に触れないように、長袖の服を着てビニールまたはゴム手袋、アームカバーなどを着用して作業しましょう。

漆でかぶれるとかゆみや痛みに悩まされ、治るまで数日程度、長引くと1~2週間程度かかります。かぶれの症状がひどいときは、漆にかぶれた可能性があると伝えて、皮膚科で診療してもらいましょう。万一、肌に漆が付いた場合は、速やかにふき取り石鹸で洗い流してください。サラダ油やキャノーラ油を使うと、漆をスムーズにふき取れます。

金継ぎキットを選ぶ際のポイント

お皿の欠片を持つ

金継ぎの道具や材料のなかには、イメージが湧かないものもあるでしょう。金継ぎ初心者には「金継ぎキット」の使用をおすすめします。金継ぎキットを選ぶポイントや注意点を解説するので、参考にしてください。

 

金継ぎキットとは

金継ぎキットとは、金継ぎに必要な道具や材料がセットになったもののことです。金継ぎキットはホームセンターやインターネット通販などで購入でき、相場は5,000~1万円程度です。何を準備すればよいのかわからない初心者でも、キットなら用意しやすく手軽に金継ぎに取り組めるでしょう。

コンパクトにまとまっているところも、金継ぎキットを使うメリット。自分で道具や材料をそろえるとどうしても場所を取ってしまいますが、キットなら大きな収納場所を用意せずに済みます。特におすすめは、「初心者用」と銘打ってあるキットや、マニュアルが入っているキットです。

 

金継ぎキットの注意点

金継ぎキットに含まれる材料には有効期限があるものも含まれています。購入後すぐ使うならよいですが、使わずに持っておくと有効期限切れになってしまう可能性もあります。また、キットに含まれる材料を使うと、数十回程度の金継ぎが可能です。手元に大量の破損した器がある方以外は、材料の大部分を無駄にしてしまうかもしれません。

「趣味にするかは分からないものの、金継ぎを体験してみたい」という方には、ワークショップへの参加もおすすめします。また、修復してもらいたい器が1つだけなら、専門家に金継ぎ修理を依頼するという手もあります。

 

金継ぎキットの選び方

金継ぎキットは、本漆か、それ以外の材料かで大別できます。食器の金継ぎをする場合は、本漆の金継ぎキットを選びましょう。本漆は伝統的な金継ぎをするための材料で、食器のように食材や口が触れる器の金継ぎに適しています。

一方、本漆以外の材料の金継ぎキットは、食品の金継ぎに不向きな傾向が見られます。エポキシ樹脂や合成漆などを使った金継ぎキットの多くは、食品衛生法基準をクリアしていません。

なお、本漆の金継ぎキットを選ぶ際は、黒呂色漆や絵漆といったあらかじめ着色された漆が含まれたものがおすすめです。生漆に色粉を混ぜると色漆ができますが、粉を混ぜる作業は難しいためです。

私はワークショップで色漆を作りましたが、色粉の分量を測るのが難しいと感じました。器1つ分のひび割れを直すには、耳かきの先に乗る程度の色粉で事足ります。しかし、初心者が色粉の量を微調整することは大変だと思います。着色された漆が含まれているキットを使った方が、きれいな器に仕上がるでしょう。

金継ぎのやり方・手順

アルミの上の素材

金継ぎの一般的なやり方や手順を解説します。本格的に金継ぎに取り組むと、完成までに2~3か月程度かかります。大切な器を美しく蘇らせるために、丁寧に取り組みましょう。

 

1.下準備をする

まずは欠けている部分の断面を耐水ペーパーで面取りします。次に、欠けた部分に生漆を塗って一晩乾かしましょう。

漆を固めるためには、60~ 70%程度の湿度が必要です。濡れたティッシュや雑巾を入れた箱やケースを用意して、漆を塗った器を保管してください。乾燥した環境の方が漆を固めやすそうに思うかもしれませんが、漆は空気中の水分を取り込んで硬化します。漆の表面を綿棒などで触ってみて、漆が付着しなければ乾いています。

ちなみに、ワークショップで訪問した店舗では、食器棚ほどの大きさの「漆室(うるしむろ)」内に修繕中の器を保管していました。

 

2.欠けた部分を埋める

次に、水と小麦粉を練ったものに生漆を加え、接着剤として使う麦漆を作ります。麦漆を器の断面や、ヒビ・欠けに塗って貼り合わせ、1週間程度保管しましょう。前述のとおり、湿度60~70%程度の環境を用意して器を保管してください。

また、刻苧を使って欠けた部分を埋める方法もあります。刻苧は、麦漆に木粉や砥粉、刻苧綿などを混ぜ合わせて作った漆のペーストです。刻苧を少量取り、器と同じくらいの固さになるまでヒビ・欠けに押し込み、数日放置して固めます。

刻苧を使うポイントは、厚塗りしないこと。厚塗りすると内部が乾かないため、一度に塗る厚みは、0.5~1mm程度です。完全にヒビ・欠けが埋まるには時間がかかりますが、コツコツと刻苧を塗り重ねましょう。

 

3.段差を埋める

漆が固まったら、はみ出た部分をナイフや耐水ペーパーで取り除き、表面を滑らかにします。器をよりきれいに仕上げるには、「さび漆」という、生漆に砥粉を混ぜたものを使いましょう。さび漆で細かい段差や欠けを埋めたら固まるまで放置し、耐水ペーパーで研いで滑らかにします。

ここまでの段階で、金継ぎの下地となる部分ができました。下地は黒っぽい見た目ですが、この後にさらに漆を重ねて金粉を蒔くと、下地は完全に隠され見えなくなります。

 

4.修復した部分に漆を塗る

麦漆やさび漆を塗った部分に、生漆や色漆を塗って固まるまで保管しましょう。私が体験したワークショップでは、黒呂色漆が使われていました。色漆を使うと、塗りムラの様子がよく分かるため均一に塗工できますよ。

生漆または色漆を塗った後は1日程度放置し、漆が固まってから耐水ペーパーで表面を水研ぎします。水研ぎの目安は、漆のツヤがなくなる程度です。漆塗りと水研ぎを数回程度繰り返すと強度が増し、以降の色漆を塗り金粉を蒔く工程を進めやすくなります。

 

5.金粉を蒔く

呂瀬漆(ろせうるし)や弁柄漆を、修繕中の部分に薄く塗りましょう。塗りムラがあると、金粉を載せた後にもムラが目立ってしまいます。筆を縦・横に動かし、筆の流れが見えなくなるまで調整してください。

30分程度置いて半乾きの状態になったら、毛棒または真綿に金粉をつけて少しずつ蒔きます。漆の色が見えなくなるまでしっかり金粉を載せるときれいに仕上がります。また、器のデザインや好みによっては、銀粉を使う方もいます。余分な金粉は、毛棒または真綿である程度拭き取っておきましょう。

金粉を蒔いたら、3~4日ほど放置して漆を固めます。周囲に金粉が付着していれば、濡らした綿棒で取り除いてください。

 

6.金粉を定着させる

金粉を定着させるために、生漆を金粉の上に塗り、ティッシュペーパーでふき取りましょう。漆が付かなくなるまでふき取りを続け、一晩乾燥させたら金継ぎが完成します。金継ぎした器は、中性洗剤で洗ってから使用しましょう。

使っていくうちに多少金粉が取れて色漆が透けて見えてくる場合もありますが、私としては、それも味わい深いように思います。

なお、金継ぎした器は、電子レンジに入れられません。間違えて電子レンジに入れてしまうと、火花が発生します。また、金粉が取れやすくなるため、食洗機や乾燥機の使用も控えてください。

金継ぎワークショップで体験してみるのもおすすめ!

金継ぎワークショップの風景

各地で金継ぎワークショップが催されています。初心者の場合は一度ワークショップで体験してみるのもよいでしょう。金継ぎの職人が指導してくれるワークショップでは、本格的な金継ぎが学べます。

器を用意してくれるワークショップもあれば、欠けたり割れたりしたお気に入りの器を持参して金継ぎできるところもあります。金継ぎした器は持ち帰って使えるため、旅行の際に体験すると思い出になりますよ。

ちなみに私が体験したワークショップでは、職人の方が1人で、4人の参加者を指導する少人数体制で行われていました。細かく出来ばえをチェックしてもらえて質問もしやすい点は、少人数ならではの良さだと思います。

金継ぎでお気に入りの器を修復しよう!

金継ぎをした器

金継ぎの技法を使えば、割れたり欠けたりしたお気に入りの器が美しく蘇ります。自分で修繕した器なら、いっそう愛着がわくかもしれませんね。初めて金継ぎする場合は、各地のワークショップに参加して、職人の指導のもと実践してみてもよいでしょう。

私たち5PM Journalは、熱量を帯びている偏愛に解釈を添えて、「あらたな気づき」を生み出すことを掲げて運営しているWebメディアです。ぜひそのほかの記事もご覧になってみてください。

5PM Journal

 

以下参考サイトです。

 

金継ぎは伝統的な修繕技法

https://hands.net/hintmagazine/craft/kintsugi-1808.html

https://www.otakaraya.jp/contents/gold-platinum/gold/japan-dentougihou-kaisetsu/

https://www.wantedly.com/companies/company_1465501/post_articles/344161

 

金継ぎの魅力

https://www.otakaraya.jp/contents/gold-platinum/gold/japan-dentougihou-kaisetsu/

https://komehyo.jp/komeru/955

https://5pmjournal.0101.co.jp/column/favoritism/a0327_l0031/

 

金継ぎに必要な道具

https://komehyo.jp/komeru/955

https://webshop.sekaido.co.jp/feature/1473

 

金継ぎの材料

https://komehyo.jp/komeru/955

https://kintsugi-girl.com/7598/

 

金継ぎをするときの注意点

https://webshop.sekaido.co.jp/feature/1473

https://minne.com/mag/articles/2446

https://kintsugi-girl.com/7740/

 

金継ぎキットとは

https://kintsugikurashi.com/column/kintsugi-kit/

https://kurashi.biglobe.ne.jp/rankings/7604/

 

金継ぎキットの注意点

https://kintsugikurashi.com/column/kintsugi-kit/

https://kurashi.biglobe.ne.jp/rankings/7604/

 

金継ぎキットの選び方

https://kintsugikurashi.com/column/kintsugi-kit/

 

1.下準備をする

https://hands.net/hintmagazine/craft/kintsugi-1808.html

https://minne.com/mag/articles/2446

 

2.欠けた部分を埋める

https://hands.net/hintmagazine/craft/kintsugi-1808.html

https://minne.com/mag/articles/2446

https://www.tenaraido.jp/ohanashi/kintsugi5/

https://hatoya-f.com/make-tools-material/make-wood-flour/

https://kintsugi-girl.com/7538/#:~:text=%E5%88%BB%E8%8B%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E4%B8%80%E5%BA%A6%E3%81%AB,0.5mm%20%E2%80%93%201mm%E3%81%8F%E3%82%89%E3%81%84%E3%81%A7%E3%81%99%EF%BC%81

 

3.段差を埋める

https://hands.net/hintmagazine/craft/kintsugi-1808.html

https://minne.com/mag/articles/2446

 

4.修復した部分に漆を塗る

https://hands.net/hintmagazine/craft/kintsugi-1808.html

https://minne.com/mag/articles/2446

 

5.金粉を蒔く

https://hands.net/hintmagazine/craft/kintsugi-1808.html

https://minne.com/mag/articles/2446

 

6.金粉を定着させる

https://hands.net/hintmagazine/craft/kintsugi-1808.html

https://komehyo.jp/komeru/955

https://kintsugi-girl.com/kintsugi-microwave/

 

金継ぎワークショップで体験してみるのもおすすめ!

https://kintsugi-girl.com/tsugutsugu/kintsugi-school/

https://japan-kintsugi.jp/experience/