管理栄養士 佐藤彩香さん

企業や保育園で栄養カウンセリング、献立作成、栄養計算、店舗運営を経験し、その後独立。
実践型の栄養サポートを行い、プロアスリート~スポーツキッズ、ダイエット希望の方など累計5,000人を超える人々と関わる。

現在はアスリート栄養サポート、専門学校非常勤講師、セミナー講師、レシピ開発なども行いながら、「あなたのかかりつけ栄養士」として活動。

もくじ

1.こんな人は、プロテインを飲んでみてもいいかも

2.プロテインを飲まなくていい人

3.たんぱく質が必要な理由

4.プロテインを飲むおすすめのタイミングは「置き換え」 

5.“プロテインならでは”のメリット 

こんな人は、プロテインを飲んでみてもいいかも

―佐藤さん、本日はよろしくお願いいたします!アスリートを中心にサポートしながら、専門学校などでも講師としてご活躍される佐藤さんに、気になっているプロテインについて根掘り葉掘り伺えたらと思います。

 

佐藤さん(以下敬称略):よろしくお願いいたします。

 

―さっそくですが、「プロテインは痩せる/健康・肌にいい」など耳にする機会が増えた気がします。いったん真偽は置いておいて、佐藤さんが管理栄養士として活躍されてきた中で、お客さまのプロテインに対する意見は変わってきましたか?

 

佐藤:栄養士になって10年以上経ちますが、昔は「プロテインを飲むのって、体にいいの?」なんて質問すらありませんでした。それが今やプロテイン、オイル、さらには日本未上陸の健康食品についてまで訊かれるようになりました。世の中全体で関心が高まっている証拠だと思っていますし、情報過多だからこそ結局何を信じていいかわからず栄養士に直接尋ねる、なんて方も多いんだと思います。

 

―わかります。真偽がわからない情報も多いですし、商品の選択肢も多いので……どういった方が飲むべき、といった目安はあるのでしょうか?

 

佐藤:わかりやすいのは、たんぱく質が不足気味の方です。それも、忙しくてつい食事を抜いてしまったり外食が増えてしまったりする方ですね。朝をパン1つやコーヒー1杯だけで済ませてしまう、なんて生活していませんか?

 

―耳が痛いです……やっぱりそういう生活はダメなんでしょうか。

 

佐藤:たんぱく質という観点で言えば、オススメできません。コーヒーにも食パンにも、たんぱく質はほとんど含まれていないので。そういう方々には、たんぱく質を豊富に含むプロテインをプラスして飲んでいただきたいです。実際、多くの方がお肉をじっくり焼く時間を確保できない朝は、プロテインデビューのタイミングとして非常におすすめですよ。 

佐藤:あとは、最近ジムなどに通う方も増えましたが、しっかり体を動かす習慣のある方は他の人よりもたんぱく質を多く摂る必要があるので、プロテインを活用していただきたいですね。

 

―ジムに通う人はプロテインなどを活用してたんぱく質摂った方がいい、というのはなんとなく想像できます。でも、実は私ジムとか行っていないので、自分にプロテインが必要かどうかもあんまりわからないんですよね……「このくらいの運動量ならプロテイン飲むのオススメ/飲む必要ない」といった目安はあるのでしょうか。

 

佐藤:例えば、コロナで余暇として散歩やウォーキングを始めた人もいると思います。そうした20~30分ほどのウォーキングをゆっくり行う、くらいの方であれば、普段の食事でたんぱく質をバランスよく摂取できているならプラスでプロテインを摂らなくてもいいと思います。

 

―プロテインって、運動している人が飲むイメージでした。でも、運動する/しないはそこまでプロテインのオススメ度合いには関係ないんですかね?

 

佐藤:そうですね、運動しない方でもプロテインは飲んで平気です。とはいえ、あまり身体を動かす習慣がない方なら、栄養バランスのとれた食生活を送っていれば一般的にたんぱく質は足りることが多いと思います。「なかなかたんぱく質摂れていないな!」と自覚のある方だけ、ちょっと取り入れてみるのはいかがでしょう。

プロテインを飲まなくていい人

―逆に、こういう方はプロテインに頼らなくてもいいよ!という方もいらっしゃるんですかね。

 

佐藤:それこそ、お肉・魚・大豆・卵・乳製品をバランスよく食べている人なら、食事だけで十分だと思います。朝にお魚を焼いて納豆と卵を食べ、夜にはお肉を……といった一汁三菜を実践できている人は、十分たんぱく質を摂れているでしょうし、敢えてプロテインを食生活に追加する必要はありません。

 

―一汁三菜……と聞くと、正直できている自信はないですね。他に「こんなライフスタイルの人は結構バランス取れているかも」といった傾向はありますか?

 

佐藤:食事の時に「一品ものではなく、主食・主菜は必ず準備しよう!」といったことが頭によぎる人の多くは、大丈夫だと思います。料理好きな方や、子ども・パートナーに料理に作る習慣がある方も、栄養バランスを考えることが染みついていると思います。

でも、食事の優先順位が低くて「おなかが満たせれば十分」という方や、10分とかでパパっと食事を済ませるためファストフードに頼るハードワーカーの方は危ないかもしれません。

佐藤:意識している人の意外な落とし穴なんですが、イタリアンとかって割とたんぱく質量が不足しがちなんですよ。サラダは意識して食べる方が多いですが、そこにちょっとしたパンやピザがあっても、たんぱく質は足りません。たんぱく質不足だと寝ている間の脂肪燃焼効率が下がるんですよ。しかも、酸素を体中に運べなくて貧血にもなりやすくなってしまうみたいな合併症を引き起こします。サラダばかり食べ続けて脂肪が燃焼しないのは、むしろ「サラダばかり食べているから」なんですよ。

 

―まさに、野菜しか意識していなかった人間の1人です……どんなに忙しくてもコンビニなどでサラダは買うようにしていましたが、たんぱく質は考えていませんでした……たんぱく質が不足しがちな方って、かなり多いのでしょうか?

 

佐藤:たんぱく質の摂取量は二極化していますね。たんぱく質が筋肉や身体を整えるホルモンになってくれて、免疫をしっかり高めることにもつながるとわかっている、栄養に対するアンテナの高い人は十分に摂っています。でも、それを知らない方は大体不足していると思います。

 

―なるほど! 「ご飯を抜く」以外でもたんぱく質が不足するケースがあるんですね。

 

佐藤:ラーメン屋さんやうどん屋さんでササっと食事を済ませる方も、たんぱく質が不足する傾向にあります。同じ外食でも、ごはんがあって、お肉やお魚を使ったメイン料理と納豆などの小鉢が付いている定食のようなものなら、たんぱく質はあまり不足しないでしょう。でも麺類だけだと、糖分・塩分・脂質こそ摂れても、タンパク質はチャーシューや卵くらいです。これでは1日で必要な分は補えないと思います。

最近はラーメンブームもあって、麺類を好まれる方が男性を中心に増えています。そういう方には、毎食糖分・塩分・脂質がメインのお食事になるので、たまには、そういった食事を抑えてプロテインを摂った方がいいとお伝えしています。

佐藤:あ、でもラーメンとかは私は食べてもいいと思っているんですよ! 一応、少ないですが、チャーシューや卵などたんぱく源はあるので。どちらかと言えばエナジードリンクなどの「口寂しくなってしまうと手を伸ばしてしまう甘い液体」をプロテインに変えるだけで、だいぶ違うと思います。ドリンクはすぐ口にできるというのもあって、一番「もっと飲みたい!」と糖分の過剰摂取につながりやすいので。

たんぱく質が必要な理由

―すみません、ここまで聞いておいて何なのですが……たんぱく質が不足すると、体にどんな悪影響が及ぶのか、あまりわかっていないかもしれません……

 

佐藤:謝る必要ありませんよ! むしろそういう方の方が多いと思いますし。イメージしやすいのは筋肉だと思います。筋肉が落ちると代謝も落ちるので、太りやすくなったり、疲れやすくなったりします。

それに、たんぱく質はホルモンにもなるので、体を整えるという意味でも重要です。髪とか肌も全部たんぱく質で出来ていますし、美容とかアンチエイジングの観点から「美人でいたい、かっこよくいたい」という人は、衰えていかないようにするためにもたんぱく質が必要です。ネイルサロンで店員さんに爪を褒められたとか、美容師さんに髪の毛にコシがあるとか言われたとか、体験談もよく聞きますね。

―となると、摂れば摂るほどいいんじゃないか、と思ってしまうのですが、「これは摂り過ぎ」とかもあるのでしょうか。

 

佐藤:「摂り過ぎ/摂り過ぎでない」というのは、検査しないとわかりません。ただ、たんぱく質にもカロリーはあるので、糖質・脂質に加える形でプロテインを飲み始めたら、摂取するカロリーは増えますし、当然体重増加にも影響があるでしょう。「プロテインは痩せる!」なんてうたうサイトもありますが、それは多くとっていた糖質や脂質、嗜好品を抑えてたんぱく質に置き換えたり、肉や魚を食べない人がきちんと生活にプロテインを取り入れたりした場合の話です。

 

―ということは、一概に「プロテインはダイエットに効果的だよ!」とは言えないわけですね。

 

佐藤:そうですね……たんぱく質が摂れていない人には、効果的になりえます。かつ現代人の多くがたんぱく質不足のため、「プロテインのおかげでダイエットに成功した!」という方が増えているのだと思います。痩せない人全員に「プロテインで痩せられるよ!」と断言することはできませんね。

先ほどお伝えしたように、十分な量の食事にプラスするのは逆効果なので、何かを置き換えるといったひと工夫でプロテインを取り入れてみてはいかがでしょう。

プロテインを飲むおすすめのタイミングは「置き換え」

―ではいよいよプロテインの具体的な取り入れ方について伺いたいと思います。まず、プロテインを飲むのにおすすめのタイミングなどはあるのでしょうか。

 

佐藤:一番は、自分がサボってしまう食事のタイミングです。例えば夜ごはんをつい食べそびれてしまう、という人なら夜ですが、一番抜いてしまう人が多いのは朝ですね。食べるのだるいな、もう少し寝ていたいな、と朝ごはんをサボってしまうことありませんか?

 

―耳が痛いです……

 

佐藤:そういった、ちょっとたんぱく質が摂れない時に頼るといいのかなと。

あとは、仕事中に小腹が減ってついお菓子などをつまんでしまうことってありますよね。朝昼晩食べていようが、ダイエット中であろうが……そういった時、お菓子ばかり食べるなら代わりにプロテインのシェイクを入れると腹持ちがよくなります。それでお菓子の量が減る可能性もありますし、いわば間食の代替として提案することはあります。

 

―あ、「間食自体が絶対にダメ」というわけではないのですね。

 

佐藤:そうですね。食事は必ず3食にしなければならない……というわけでもないんですよ。小分けにして5食くらいで食べる人もいれば、きっかり2食、なんて人もいます。それは、ご自身がしっくりくるリズム・感覚でいいと思います。

ただ、一気にドカッとお肉を食べて、さらに追加でプロテインも飲む、だと効率も悪くお勧めしません。ラーメンが分かりやすい例ですが、普段の食事って糖質と脂肪に簡単に偏るので、たんぱく質が不足しているときや、3食とは別でお腹が空いたとき、スナック菓子を食べるくらいならプロテイン飲めばいいよ、みたいな。

―基本的には「置き換え」、もしくは欠けてしまう食事の代わりにプロテインを活用するのがいいということですね。てっきりいつもの食事にプラスするものだと思っていたので、食前・食後どちらで飲めばいいんだろう、なんて訊こうとしていました。

 

佐藤:そういった質問もよくいただきますが、やはり食前・食後に別で飲む、というのはおすすめしていません。ただ例外もあって、「たんぱく質が足りない食事をする予定がある」といった場合は、食前にプロテインを飲むことをおすすめすることがあります。

というのも、空腹時にいきなり糖を口にすると、血糖値が急上昇してしまいます。しかし、たんぱく質や水分などを事前に胃に入れておけば、それを防ぎ血糖値をゆるやかに上げることができます。

 

―血糖値が急激に上がらないようにサラダから食べる、みたいな話は聞いたことがあります! そういう理由だったんですね。

 

佐藤:ちなみに、血糖値の上がり方はメンタルにも影響があると言われています。血糖値の上がり下がりが激しいと気分の浮き沈みも激しいと言われています。鬱と血糖値の研究もあるくらいですから。体の健康と心の健康というところでは、食べ方も関わってくるんですよ。

こんな時間・シーンでプロテインは活躍する

―間食との置き換えという話で言うと、私の友人が生理前の暴飲暴食を気にしているのですが、そういう方にもおすすめできそうですね。

 

佐藤:私自身の経験としても、生理で食欲が増したときにはプロテインをよく使います。「何か食べたい!」というときに、ジャンクフードやスイーツをばくばく食べたい衝動をごまかすと言いますか……(笑)ちなみに、たんぱく質を摂らずに糖や脂質ばかりを摂っていると、甘いものを身体がもっと欲するんですよ。いわゆる中毒性と言いますか、食べれば食べるほどハマっていくのが甘いものの怖いところなので、それを防ぐためにも私はプロテインを使っています。

それに、プロテインはホルモンのもとにもなるので、女性ホルモンを整えるうえでも摂っていただきたいです。

―他におすすめの「プロテインと何かを置き換えるシーン」があれば、ぜひ知りたいです!

 

佐藤:例えば、朝にパンやおにぎりを2個くらい買う方は、そのうちの1つをプロテインに置き換えるとかですかね。もちろん、パンやおにぎりがだめだという話ではありません。糖分だけになっているなら、2つのうち1つだけはプロテインに置き換えると栄養バランスが整います。

「お昼は時間がなくてラーメンだけドカッと食べるだろうから、そこで糖分とか脂分をたっぷり摂る!」とわかっているなら朝はプロテインだけにしてみていいと思います。でも、運動量が多かったり、営業で活発に外回りしたりする方は、プロテインだけだとシンプルにおなかが減ってしまうと思いますし、そんな人はおにぎりなども入れた方がいいと思います。

 

―タイミングと少し似てしまいますが、プロテインを飲むにあたって望ましい「時間帯」はあるのでしょうか。

 

佐藤:朝がおすすめですね。朝にたんぱく質を摂ると、それが分解されてアミノ酸(トリプトファン)になります。これがセロトニンという幸せホルモンに変わっていくので、日中を健やかに過ごせます。またセロトニンは、睡眠に必要なメラトニンというホルモンの生成にも関わります。つまり、日中は元気に過ごせて、夜は質の高い睡眠をとれる……となると、朝にしっかりたんぱく質を摂るのは効果的です。

もちろん朝昼晩でバランスよくたんぱく質を摂ることが最も大事ですが、まずは朝試してみるとコンディションが良くなりやすいですよ、とお伝えしています。

“プロテインならでは”のメリット

―ちなみに、たんぱく質を摂るにあたって、食事で摂るのとプロテインで摂るのと、どちらがいいなどあるのでしょうか。

 

佐藤:私は食事をオススメしています。プロテインは、メーカーによっては他の栄養素を添加しているところもありますが、多くの場合がほとんどたんぱく質で構成されています。一方、お肉はたんぱく質にプラスでビタミンや鉄分が入っていたり、栄養素がセットになっていたりするので、食事の方が他の栄養素も摂れていいと思います。

佐藤:ただ、もちろんプロテインで摂る良さもあって。プロテインは消化が速いので、深酒してしまった翌日「どうしても食欲がない!」なんて時に、最低限プロテインで水分とたんぱく質だけ摂るのはアリだと思います。固形物を胃に入れたいか、入れたくないか……言い換えれば、食欲があるか/ないかをベースに考えていただければと思います。

 

―消化以外にも、プロテインを生活に取り入れるメリットはあるのでしょうか?

 

佐藤:プロテインならではの魅力・メリットでわかりやすいのは「続けやすさ」ですね。栄養士として「たんぱく質をもっと摂った方がいいですよ」とお伝えすると、「わかりました!卵とか魚を積極的に摂ってみます!」とか言われるんですけど、やっぱりなかなか続かないんですよ。単身の方だと、自分のためにご飯作り続けるモチベーションは料理が好きじゃないとなかなか湧きませんし、かといって外食に頼るとやはり栄養分が偏りがちです。

そういう方には「プロテインとか使ってみたらどう?」とお伝えすることはあります。使い勝手が良く手軽に取り入れられますし、最近は美味しくて飲みやすいものも増えていますから。

佐藤:すると、「今日は焼き肉行ったしわざわざプロテイン飲む必要ないよな……あれ、じゃあ他の栄養素はどうだろう?」と他の部分を見直すようになったり、無駄に食べるのも防げたり。プロテインは「健康のため食生活に気をつける最初のステップ」だと思っています。

 

―まさに、第一歩なわけですね。これから飲むプロテインを選ぶにあたり、どういったポイントに注意すればよいのでしょうか?

 

佐藤:例えば、アスリート用のプロテインを「エネルギーありそう!」と選ぶ人が一定数いらっしゃいます。でも、運動しているアスリートを想定して作られたプロテインには、エネルギー補給のために糖などもプラスされているため、むしろ糖分過多になってしまうものも多いんです。

 

―気になっていたもの、ちょうどアスリート用の「リカバリープロテイン」でした……

 

佐藤:危なかった!気になるものがあったら、裏面の成分表示を必ず見てください。スポーツをする習慣が特になければ、1つの目安ですが、1杯あたりにたんぱく質20g以上、炭水化物10g未満が目安としてオススメです。

 

―プロテインを飲むタイミングから飲み方、選び方の目安まで……気になること全部答えていただき、本当にありがとうございました!

佐藤:素人だとわからない部分も多い、飲むタイミングや飲み方をはじめとするプロテインのあれこれ。「プロテインって最近よく聞くけど、踏み出す勇気が湧かないな……」と悩んでいるあなたの背中を押せたら幸いです。
私も、忙しい朝に食事を抜いてしまいがちなので、そういう時は手軽に飲めるプロテインに頼ってみようかと思います。

 

    2022.10.14

    Text by 5PM編集部

    Edit by 木村眞樹子 医師(KDDI ビルクリニック 循環器内科・内科)