もくじ

1. 熨斗とは

2. 熨斗紙(のし紙)とは「水引とのしを印刷した紙」

3. 熨斗の結び方の種類と意味

4. 熨斗の紐の本数や色の意味

5. 熨斗の使い分けを紹介

6. 熨斗に関するよくある質問

7. 熨斗の基本やマナーを知って贈り物に活かそう

熨斗とは

祝儀袋

熨斗とは、熨斗紙(のしがみ)の右上にある細長い六角形の飾りを指します。熨斗の歴史は古く、奈良時代に成立した『日本書紀』にも熨斗に関する記述が見られます。もともとはアワビを伸ばして乾燥させた「熨斗鰒(のしあわび)」と呼ばれる献上品だったものが、長い歴史を経て、贈り物に添えられる小さな飾りとして定着したと考えられています。

古くは本物の熨斗鮑が添えられていましたが、江戸時代には高価な熨斗鮑の代わりにサザエや昆布、鳥の羽などが用いられるようになりました。

明治時代以降は、和紙を折って作る折熨斗が主流です。フォーマルな折熨斗は赤と白が基本のカラーですが、比較的カジュアルな場では金色やピンク、ブルーなど、伝統にとらわれないカラフルな色が使われています。また、デパートやオンラインショップで熨斗をつける場合は、熨斗と水引を印刷した熨斗紙をつけるのが一般的です。現代では、簡略化された熨斗紙を熨斗と呼ぶケースも増えています。

 

熨斗をつける意味

熨斗を理解するためには、日本に根付く神仏への信仰を理解する必要があります。日本には
古くから、「贈りものは神様への供え物」という考え方が存在しました。実際に、熨斗の起源である熨斗鮑は、古来の製法を守りながら21世紀の今も伊勢神宮に奉納されています。

熨斗鮑は、縁起物であると共に「生もの」の象徴でもありました。古来より吉事の際には、生ものを贈ることが好まれたため、熨斗をつけることで「生ものを添えました」という意味を表していたとされています。

 

熨斗はどのようなときにつけるもの?

現在も生もの以外の食品やタオル、食器類を贈るときは、熨斗をつけるのがしきたりです。反対に、ハムやかつお節などの生ものを贈るときは、熨斗は必要ありません。生鮮食品に生ものを象徴する「熨斗」をつけてしまうと、意味を打ち消し合ってしまう可能性があるため、生ものには熨斗をつけないように注意しましょう。

熨斗が必要な贈り物

 ● 生もの以外の食品

 ● タオル

 ● 食器類 など

熨斗が不要な贈り物

 ● ハム

 ● 鮮魚

 ● かつお節 など

病気や災害のお見舞いは、お祝いごとではないため熨斗はつけません。また、仏前へのお供え物にも、生ものの象徴である熨斗は不要です。弔事やお供え物のマナーについては、後ほど詳しく解説します。

熨斗紙(のし紙)とは「水引と熨斗を印刷した紙」

粗供養袋

熨斗紙(のし紙)とは、熨斗と水引を印刷した紙のことです。お店によっては、表書きまで印刷されている場合もあります。

水引は、熨斗紙の中央に印刷された飾り紐を指します。熨斗が慶事にだけ用いられるのに対して、水引は弔事でも使われます。お祝い事やお見舞いなど、用途によって紐の結び方が異なることを覚えておきましょう。

表書きは、水引のうえに書く贈り物の目的です。結婚祝いであれば「御結婚御祝」、入学祝いであれば「御入学祝」と書き加えます。

 

熨斗紙(のし紙)と懸け紙の違いは

熨斗紙と懸け紙は、使用するシーンが異なります。熨斗と水引が印刷された熨斗紙は祝い事で用いられるのに対して、水引だけが印刷された懸け紙は葬儀などの弔事で使われます。

表書きに「お見舞い」と書く場合も、熨斗はつけません。熨斗鮑は「伸し鮑(のしあわび)」と表現されることもあるように、幸せや運気を伸ばすといった意味を持ちます。同時に、病気や災害の影響が伸びてしまうと捉えることもできるため、お見舞いには適していません。お見舞いには、赤と白のシンプルな水引のみが印刷された懸け紙を選びましょう。

注意したいのは、病気やケガが完治したときに渡す「快気祝い」は、熨斗のついた熨斗紙を使うということです。病気に対する贈り物という目的は同じでも、完治しているか治療中かによって使い分ける必要があります。

熨斗の結び方の種類と意味

花結び

熨斗紙に印刷された水引には、次の3つの意味があるといわれています。

 ● 封印

 ● 魔除け

 ● 人と人との結びつき

もともと水引は紐で結ばれており、未開封の証として用いられていました。また、古来より「結び」には不思議な力が宿るとされており、魔除けや邪気払いの役目を果たしています。さらに、人と人との結びつきの象徴としての意味も持ちます。

水引の結び方にはいくつかの種類があり、使うべきシーンが異なります。水引のマナーを知らないと、心を込めて選んだ贈り物の真意が相手に伝わりません。間違った種類を用いたことで、相手に誤解を与えてしまう恐れもあります。

ここでは、水引の結び方の種類や意味、用途に合わせた使い分けを解説します。意図せず失礼な贈り物になってしまわないように、正しい知識を身につけておきましょう。

 

蝶結び(花結び)

蝶結び(花結び)は簡単に結び直せることから、「何度繰り返してもよい」お祝いやお礼の場で使われます。具体的なシーンとしては、出産祝い、入学祝い、卒業祝い、お歳暮、お中元などが挙げられます。

基本的に、蝶結びは弔事では用いられません。病気や災害のお見舞いなど、繰り返さない方がよいことに対しても不向きです。吉事であっても、結婚のように末永い幸せを願う場合には、蝶結びは避けましょう。

 

結び切り

結び切りは簡単にほどけないよう固く結ばれていることから、「一度きりであるべき」お祝いや弔事の場で使われます。慶事の場合は紅白や金銀、弔事では黒白や双銀の水引を選びましょう。

慶事の具体的なシーンとしては結婚祝い、快気祝い、退職祝いなど、弔事の具体的なシーンとしては、お通夜、告別式、各種法要などが挙げられます。

病気や怪我、災害などのお見舞いのときも、「繰り返してほしくない」という願いを込めて結び切りを使います。

 

あわじ結び

あわじ結びは複雑な結び目で簡単にほどけないことから「一度きりであるべき」お祝いや弔事の場で使われます。結び切りから派生したもので、丸みを帯びた結び目がアワビに似ていることから名付けられました。

具体的なシーンは結び切りと同様で、慶事の場合は結婚祝い、快気祝い、退職祝いなど、弔事の場合は、お通夜、告別式、各種法要などとなります。

結び目が華やかなあわじ結びは、とくに婚礼で好まれています。あわじ結びをさらに応用したものとして、「あわじの梅結び」「立て連続あわじ結び」などがあります。最近の結婚式では、包む金額が多いほど豪華で華やかな水引が選ばれる傾向です。

熨斗の紐の本数や色の意味

2種類の祝儀袋

熨斗紙に印刷された水引は紐の本数や色によって異なる意味を持ちます。基本的には、華やかなデザインは慶事、落ち着いたデザインは弔事となります。

ただし、水引の使われ方は地域によっても異なります。とくに、公家社会の習慣が残る京都近郊は細かく使い分けられている場合があるため、事前に確認しておくと安心です。

 

熨斗の紐の本数

水引の紐の本数は、慶事が奇数(3本・5本・7本)、弔事が偶数(2・4・6本)とされています。慶事は5本、弔事は4本が一般的な本数です。紐の本数によって贈り物の格が上がるため、格式を重視したい場合は、慶事は7本、弔事は6本に増やします。

ただし、慶事だからといって必ずしも奇数が用いられるわけではありません。たとえば、婚礼の場では偶数の「10本結び」を使用します。これは、両家の結びつきを表しているそうです。

また、お悔みの場において奇数の「5本結び」を使う地域もあります。実際に市販されている弔事用の香典袋は、5本結びとなっているケースが少なくありません。5本になっている理由としては、「偶数を陰、奇数を陽」とする古代中国の陰陽五行説が背景にあると考えられます。紐の本数で意味が変わることを理解し、地域性を踏まえたうえで選んでいきましょう。

 

熨斗の紐の色

水引の紐は、色によっても使い分けされています。

慶事で用いられる色

 ● 紅白:カジュアルからフォーマルまで、さまざまなお祝いの場で使われます。

 ● 金銀:結婚や長寿など、一度きりの格式の高いお祝いの場で使われます。

 ● 赤金:神社で扱われるお札や門松飾りなど、限られた場で使われます。

弔事で用いられる色

 ● 黒白:香典やお供えなど、仏事全般で使われます。

 ● 黄白:関西や北陸、山陰など、一部地域の仏事で使われます。

 ● 双銀:包む金額が大きい場合に使われます。

慶事では、熨斗紙に白が印刷できない代わりとして、金や銀が用いられるケースもあります。弔事では、仏式、神式、キリスト教式によって色の使い分けがされています。神式では双白が一般的です。キリスト教式では双銀を用いることもありますが、通常は水引がない白無地に百合の花や十字架などが描かれたものが使われます。

熨斗の使い分けを紹介

熨斗紙

「熨斗をつける」といっても、熨斗の有無、水引の本数、結び方、色など、さまざまなしきたりがあります。

ここでは、「結局どれを選べばいいのかわからない」という方向けに、具体的な使い分け方を一覧で紹介します。

場面表書き      熨斗の有無      水引の種類      紐の色      紐の本数       
結婚祝い御結婚御祝あり

結び切り

あわじ結び

紅白/金銀10本
入学祝い

御入学祝

御入学御祝

あり蝶結び紅白5本/7本
お歳暮お歳暮あり蝶結び紅白5本/7本
お中元お中元あり蝶結び紅白5本/7本
快気祝い快気祝あり

結び切り

あわじ結び

紅白5本/7本
お見舞い御見舞なし

結び切り

あわじ結び

紅白5本/7本

お通夜

告別式

御香典なし

結び切り

あわじ結び

黒白/双銀4本/5本/6本
四十九日までの法要御霊前なし

結び切り

あわじ結び

黒白/双銀4本/5本/6本
四十九日以降の法要御仏前なし

結び切り

あわじ結び

黒白/双銀4本/5本/6本

表中で熨斗ありになっていても、不要とされる贈り物の場合は熨斗鮑(右上の六角形の飾り)をつける必要はありません。御入学祝は広く使われている表現ですが、地域によっては「死」を連想させる4文字が不適切だと感じられる場合もあります。4文字を避けたいときは、表書きを「御入学御祝」に変更する方法があります。

また、今回紹介した弔事は一般的な仏式にもとづいているため、宗教や宗派によって表書きや紐の色などが異なります。使い分けや書き方に迷ったときは、身近な年長者に確認してみましょう。

 

内熨斗と外熨斗の違いは

内熨斗と外熨斗は、包装紙で包む順番が違います。内熨斗は、贈り物に直接熨斗をかけてから包装紙で包みます。贈り物を渡すときに表書きが見えないことから、控えめな印象があり、内祝いなどに適しています。配送で贈るときも汚れる心配が少ない内熨斗がおすすめです。

外熨斗は、贈り物を包装紙で包んだうえから熨斗をかけます。表書きや名入れが一目で確認できる外熨斗は、「お祝いする気持ち」をストレートに伝えることができます。

自分や身内に吉事があった場合は内熨斗、相手に喜ばしい出来事があった場合は外熨斗を用いることが多いですが、厳密な決まりはありません。配送のときは内熨斗、手渡しのときは外熨斗など、状況に合わせて使い分けていきましょう。

お祝いの品の購入を考えている方は、こちらの商品がおすすめです。丁寧に織り上げられたタオルは、特別な日の贈り物にもぴったりです。フィンランドの要素がたっぷり詰まったヴィヒタタオルの記事も、ぜひご覧ください。

ヴィヒタタオル | 5pm Journal

熨斗に関するよくある質問

Q&Aの積み木

最後に、熨斗に関するよくある質問にお答えしていきます。たとえば、慶事・弔事のときはすべての品物で熨斗紙や懸け紙が必要なわけではありません。

熨斗の使い方は歴史と共に変化しているため、昔からのしきたりと現在の在り方を理解することが大切です。ここでは、略式の短冊熨斗や熨斗紙を自分で用意する方法などを紹介します。

 

熨斗をつけないのはマナー違反?

熨斗をつけないからといって、一概にマナー違反にはなりません。たとえば、サイズの大きな家具や家電には、物理的に熨斗をつけることはできません。オンラインショップで購入したものを相手に直接届ける場合、ギフト対応できないケースもあるでしょう。また、すでにリボンがかかっていたり、ラッピングされたりしている商品にも熨斗は不要です。

熨斗をつけなくてもマナー違反にはなりませんが、「のし紙をかけるのが古くからのしきたり」という地域もあります。不安な場合は地域の慣習に詳しい人に相談し、どのようにするかを判断してください。

 

短冊熨斗とは?

短冊熨斗とは、熨斗紙よりさらに簡略化された細長い紙を指します。短冊熨斗にも、熨斗と水引は印刷されているため、一般的な熨斗紙と同じように使われます。短冊熨斗でも失礼にはあたりませんが、少しカジュアルな印象となるかもしれません。

相手に気遣いをしてほしくないときや、堅苦しい雰囲気にしたくないときは、あえて短冊熨斗を使うケースもあります。贈り物の右上部に控えめに貼れる短冊熨斗は、ちょっとした贈り物などにおすすめです。

 

熨斗紙は自分でも用意できる?

熨斗紙は自分で用意することも可能です。ネット上には無料でダウンロードできるテンプレートも豊富にあり、表書きと名入れを入力して印刷するだけで簡単に作成できます。PDFやWordなど、フォーマットも充実しています。

贈り物を購入したあと、「やっぱり熨斗をつけたい」と思ったら、自分で作成してみましょう。熨斗と水引だけを印刷し、表書きと名入れは手書きにするなど、少し手間をかけるとお祝いの気持ちが伝わりやすくなるかもしれません。熨斗紙は、水引の結び目が中央になるようにつけると美しく仕上がります。

 

熨斗紙には何を書く?

熨斗紙は、次の4項目で構成されています。

 ● 熨斗(熨斗鮑)

 ● 水引

 ● 表書き

 ● 名入れ

熨斗と水引は印刷されているケースが多いため、表書きと名入れを書き加えることになります。熨斗紙に文字を書くときは、ボールペンやサインペンではなく、毛筆や筆ペンを使用するのがマナーです。慶事の場合は濃墨、お通夜や告別式の場合は薄墨の毛筆を使います。

水引の結び目の上に表書き、下に名入れを書いていきます。名入れは、苗字だけでもフルネームでも構いません。目下の人に贈る場合は苗字だけ入れるのがマナーだといわれることもありますが、同じ名字を持つ人が多い場合は、フルネームを入れた方が親切です。また、出産の内祝いでは、生まれた子どもの名前をふりがな付きで書くのが一般的です。

連名の場合は、最大3名まで名入れできます。一番右に目上の人、一番左に目下の人がくるように書いていきます。表書きより名入れを少しだけ小さめに書くと、全体のバランスが整います。

「御入学御祝」など、表書きが長くなる場合は、御入学を右上にずらし、結び目の上に御祝を大きく書く方法もあります。毛筆や筆ペンで書き慣れていない方は、試し書きをして文字の大きさやバランスを確認してみましょう。

熨斗の基本やマナーを知って贈り物に活かそう

熨斗付きを渡す女性

日本では、古くから贈り物に熨斗をつける文化があります。地域によってもマナーに違いがあるため、どのように使い分けるのか悩んでしまうことがあるかもしれません。使い分けの第一歩として、熨斗は生ものの象徴であり、お祝い事にのみ用いられることを覚えておきましょう。

水引の結び方についても、「何度繰り返してもよいことは蝶結び」「一度きりであるべきことは結び切りやあわじ結び」というポイントを押さえておくと、いざというとき役立ちます。

5PMJournalでは、暮らしを豊かにする情報や日々の生活に役立つコラムを発信しています。厳選したセレクトアイテムもご紹介していますので、ぜひそのほかの記事もご覧になってみてください。

参考

【HART WELL】熨斗(のし)とは? 種類の違いやマナー、使い分け方を解説

【Shaddy】のしとは何か? なぜ必要か?

【MUFG】水引の意味と由来は?結び方の種類やご祝儀・不祝儀の相場なども紹介

【ストアエキスプレス】贈り物に使われる熨斗(のし)とは? 水引の種類や使い分け方をご紹介

【Keio NET SHOPPING】【お中元の「掛け紙(のし)」の基礎知識】正しい書き方・掛け方など総ざらい

【TSUNAGU】内祝いに「のし」なしは失礼?基本マナーと作成方法を紹介

【ベルネージュダイレクトギフトオンラインショップ】内祝いを「のしなし」で贈るのは失礼?基本のマナーと注意点

【熨斗の世界】熨斗の由来〈折熨斗おりのしができるまで〉

【iida mizuhiki association】水引結び中級編1

【株式会社 家族葬】香典袋の表書き「御霊前」「御仏前」「御香典」の違いとは?宗教・宗派ごとのマナーも解説