至高の体験を届ける、PostCoffeeの"次世代のコーヒージャーニー"

2021.01.08
未来のライフスタイル・価値観・カルチャーを作っていく5PMの仲間を、ものづくりの背景に広がるストーリーや想いとともにご紹介。今回は、「次世代のコーヒー体験を届けたい」という想いを抱く、PostCoffeeの下村領さんが登場します。
ブランド
ポストコーヒー / パーソナライズコーヒーのサブスク
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Craftmanship
当たり前を超えて
Art&Culture

コーヒー好きの日本人。しかし「本物」を知る人はわずか

 ―PostCoffeeはコーヒー豆のサブスクリプションということですが、具体的にどのようなサービスなのでしょうか?

 

下村:会員になっていただくと、毎月3種類のスペシャルティコーヒーの豆がポストに届く「コーヒーの定期便」サービスです。AI(人工知能)でお客さまの好みを解析し、提供しています。

下村領

 

―「スペシャルティコーヒー」とは、どういったものですか?

 

下村:栽培地が特定でき、栽培から精製まで一貫した体制・工程で品質管理を徹底しているコーヒーです。

ぼくはもともと缶コーヒーばかり飲んでいる「自称・コーヒー好き」でしたが、はじめてスペシャルティコーヒーを飲んだときに、その違いに驚きました。缶コーヒーは苦みの塊ですが、スペシャルティコーヒーは後味が良いのはもちろん、香りも際立っていました。一度飲むと、もう缶コーヒーには戻れなくなりましたね(笑)。

ただ、スペシャルティコーヒーは国内での流通量が少なく、現状ではわずか8%ほどです。PostCoffeeでは、その希少なスペシャルティコーヒーのなかから30種類を厳選して取り寄せています。なかには、国内ではうちしか取り扱っていない豆もありますよ。

 

―30種類もあると、さまざまな好みに対応できそうですね。

 

下村:そうですね。多くの人に、自分自身に本当に合う、美味しいコーヒーに出会ってほしいんです。だから、街のコーヒー屋さんにあるようなクセのある豆だけではなく、スタンダードでバランスのいい豆も用意しています。お客さまのデータを分析し、さまざまな嗜好に対応できる豆を揃えて、毎月なるべく種類を変えてお届けするようにしています。

たくさんのコーヒーに出会うことでいままで気がつかなかった発見があったり、コーヒーの楽しみ方も広がったりするのではないかなと思っています。そういった体験の入り口になりたいですね。

コーヒー診断で簡単な質問に答えると、毎月1回、3種類の豆が届く。豆の種類とローストの違いなどによって、全部で15万通りの組み合わせがある

 

―お客さまにスペシャルティコーヒーを届けたいという想いはどこから来るのでしょうか?

 

下村:日本には喫茶店文化が根づいていて、世界的に見てもコーヒーをよく飲む国です。それにもかかわらず、スペシャルティコーヒーを味わったことがない人が多くて。「本物」を知らないのは、もったいないと思うんです。

たとえば、1日8時間睡眠だと、「人生のうちの1/3はベッドの上で過ごしている計算になるので寝具は良いものを買いそろえたい」と考える人は多いですよね。コーヒーも同じだと思うんです。

コーヒーはカフェインが入っているため、1日で飲める量には限界がありますよね。一生のうちで限られた数のコーヒー体験を偽物で埋めてしまうのはもったいないですし、毎日飲むコーヒーはせっかくなら良いものを飲みたいじゃないですか。PostCoffeeで広めたいのは特別なときの一杯ではなく、「毎日のコーヒー」をよくすることなんです。

3種の豆のほかに、ドリッパーとフィルターも一緒に届く

 

―「本物」という言葉がありましたが、下村さんにとっての「本物」とはどういったものなのでしょうか?

 

下村:ぼくはキャンプが趣味なのですが、道具を選ぶときの基準は、キャンプ風のものではなく、機能性の高い道具を選ぶようにしています。偽物が嫌いなんですね。家の床がコンクリート風のタイルカーペットとか、ジーンズのユーズド加工とか。そういう見かけだけ繕ったものではなく、見た目も良くてかつ実用性があるものが本物だと思っています。

―下村さんはコーヒーも身の回りの道具も本物志向を追求し、お客さまにも本物のコーヒーを届けたいという想いを持っている。ただ、コーヒーはすごくディープな世界というイメージがあり、本格的に足を踏み入れるにはハードルが高いと感じている人も多いと思います。

 

下村:コーヒーって奥深い世界なので、どうしてもマニアックになりがちなんですよね。なので、ビギナーの方にいきなりディープなところを説明してしまうと、拒絶反応を起こしてしまうこともあります。

同様に、コーヒー豆の世界は「フェアトレード」「サステナブル」といった文脈で語られることも多いのですが、ぼくはそこを前面に押し出すことも避けたいと考えています。まずは深く考えずに、衝動的な感覚で好きな豆を買うというのでいいと思っています。長く飲んでいくうちに、コーヒーが生産された農園や地域、生産者さんのことを考えたりして、結果的にそれがサステナブルにつながっていたという状態が最も望ましいと思います。

ぼく自身はコーヒー屋をやっているのでこだわりはもちろんありますが、あまり蘊蓄(うんちく)を語らず「とりあえず美味しいコーヒーだから飲んでみて」という気楽な感じでおすすめしたいですね。だから最初は淹れ方なんかも自己流でいいと思います。

 

うんちくはいらない。コーヒーは衝動的に、ファッション感覚で選ぶ

―いろいろと試しながら学んでいけばいいと。

 

下村:そう思います。最初はある意味「適当」でもいいんです。とりあえずお湯を注げばできるんだから。それで少し違うなと思ったらお湯の量を足したり減らしたり、温度を変えてみたりしていけば、少しずつ美味しく味わえるようになっていくはずです。

AI診断のスマホ画面。趣味嗜好、ライフスタイルに関する質問に答えるだけで毎月1回、「あなた専用」の美味しいコーヒーが届く

―AI診断を行っているということですが、スペシャルティコーヒーを気軽に体感してもらうために、どんな工夫をされているのですか?

 

下村:コーヒー豆のAI診断はスマホやパソコンを使って10個の質問に答えるだけで簡単にできます。質問内容も好きな食べ物やライフスタイルなどを聞いたりするものなので、豆のことを深く考えずに答えられます。コーヒーに関する難しい知識は不要です。PostCoffeeでは、とにかく本物の豆を気軽に味わってもらえるように工夫しています。

パッケージデザインも、ぱっと見で衝動買いできるようなファッショナブルなものを意識していますね。人に見せたり、SNSに投稿したくなるようなおしゃれな感じ。毎月届くコーヒーボックスの外装の色も赤や白など、定期的に変えてお客さまがワクワクするような仕掛けを盛り込んでいます。

 

下村:最初はファッション感覚で入るくらいでいいと思います。コーヒーにこだわっているって、なんとなくカッコいいとか、暮らしが豊かになりそうとか、そういう入り方。そこでPostCoffeeを選んでもらえれば、自ずとコーヒーの奥深い世界を知ることになるでしょう。毎月、違った味わいのコーヒー豆が届き、付属の冊子ではコーヒー豆のラインナップやおすすめの淹れ方などもご紹介しています。

毎朝、3種類の豆からその日の気分で選ぶ楽しさや、自分で工夫してコーヒーを淹れる行為も、ファッション感覚で楽しいと思います。そういったことを体験するうちに知識がついて、もっともっとこだわりたいと思えるようになっていただけるのではないでしょうか。

 

下村さんが実際にキャンプの際に使っているコーヒーセット

コーヒーの「Peak Experience」を知ってほしい

―下村さんご自身のコーヒーライフも教えてください。どのような飲み方や淹れ方、シチュエーションでコーヒーのある生活を楽しんでいるのでしょうか?

 

下村:毎朝、目覚めとともにスペシャルティコーヒーを淹れて飲んでいます。どんなに忙しい日でも、その一杯は欠かさないようにしていますね。朝のドタバタのなか、わずか5分だけでもコーヒーを淹れて味わう。大げさかもしれないですけど、その空白の時間が人生を豊かにしていると感じるんです。それって禅とか瞑想に近い感覚なんだと思います。雑念を取り払って気持ちを整える大切な時間。意識を集中させる儀式のようなものですね。

 

―カフェやレストラン、ホテルなどで飲むものが「特別なコーヒー」と考えがちですが、なにより重要なのは自宅でのいつものコーヒー時間を豊かなものにするということですね。下村さんの飲み方は、まさにPostCoffeeの理念を体現されていますね。

 

下村:はい。カフェも好きですが、そこでの体験はある程度画一的です。一方で、自宅でのコーヒータイムは、気分や淹れ方、豆選びなど、いろいろな工夫次第で豊かさを引き上げることができるので体験の満足度に上限がありません。

 

下村:それとは別に、非日常的な体験とセットで味わうのもいいですよ。ぼくは趣味が多いんですけど、どの遊びもコーヒーとの相性が抜群です。たとえば、キャンプ。仲間とテントでお酒を飲みまくった翌朝、若干の二日酔い状態で富士山を眺めながら飲んだコーヒーは本当に美味しかったですね。

 

―ああ、それは最高でしょうね……。

 

下村:ほかにも、SUP(サップ)という立ち漕ぎのサーフボードで湖を渡っているときに、湖面上でコーヒーを淹れて飲んだのも最高でしたね。湖には波がなく静かで、特に朝は湖面が鏡のようになって空がそのまま映り込む。そんな美しい世界で味わう一杯のコーヒーは、感動的ですらありました。

自宅での毎日のコーヒーにせよ、非日常でのコーヒーにせよ、自分自身のライフスタイルに合ったとっておきの体験が大事だと思っています。これをぼくはPeak Experience(至高の体験)と呼んでいて、PostCoffeeとしてお客さまにも広めていきたいと思っています。

 

―それぞれのPeak Experienceを見つけてほしいと。

 

下村:そうですね。ぼくのようにキャンプ場での一杯とか、バイクで誰もいないところまで行って飲む一杯とか、あるいはスキー場で飲んだりするのもいいかもしれない。でもそれだけじゃない。仕事場で飲むコーヒーもそうだし、自宅もそう、人それぞれにさまざまなスタイルがある。コーヒー好きの数だけ、それぞれのPeak Experienceがあります。

もちろん、毎月1回ポストを開けたときにスペシャルティコーヒーの香りが広がり嬉しくなる気持ちも、ひとつの大切なPeak  Experienceです。

 いまも定期的にオンラインコーヒーセミナーを開催していますが、今後もこれまで以上に、アウトドアのイベントを企画するなどして、お客さまがそれを見つけるきっかけをつくりたいと考えています。自身のPeak Experienceを知ることで人生がもう一段、豊かになると思いますから。

 

街のコーヒー屋さんと手を取り、世界のコーヒーを届けたい

―今後、PostCoffeeではどんなことを実現したいですか?

 

下村:真っ先に取り組むべき課題は、より美味しいスペシャルティコーヒーを日本中に広げていくことです。しかし、それはPostCoffeeだけでできることではありません。マイクロロースターと呼ばれるような自家焙煎店や街の小さなコーヒー屋さんと一緒に、取り組んでいきたいです。

そのために2020年末から「コーヒーのマーケットプラットフォーム」をスタートさせました。簡単に言うと、マイクロロースターと消費者をつなぐシステムですね。このプラットフォームを通じ、こだわりを持ってスペシャルティコーヒーを提供している方々のことを広く知ってもらえたらと考えています。

 

―これまで、マイクロロースターは一般の人にコーヒー豆を売ることが難しかったのでしょうか?

 

下村:はい。マイクロロースターは卸し、つまりtoB向けのビジネスが売上の大部分を占めていました。しかし、今回のコロナ禍によりカフェなどが閉店したり仕入れを縮小したりしたため、厳しい状況に置かれている。そこでPostCoffeeとして、一般のコーヒー好きとマイクロロースターをつなげるようなお手伝いができないかと考えたんです。

 

―そうなれば、現状8%しか流通していないスペシャルティコーヒーがもっと広まっていくかもしれませんね。

 

下村:そうしたいですね。じつは国内のコーヒー豆の消費量自体は増え続けています。そのうちの何割かをマイクロロースターのスペシャルティコーヒーに置き換えることで、スペシャルティコーヒーを浸透させていきたいんです。

これは、大手のコーヒーメーカーではなかなかできないことだと思います。うちのような「チャレンジャー」だからこそ、国内のコーヒー文化を変革するような大胆な動きができるのではないでしょうか。

さらに今後は世界中のコーヒーをPostCoffeeで買えるようなシステムも作っていきたいです。いまはAIによるサブスクサービスですが、それをきっかけに「本物」を知ったお客さまが、自分でいろいろな豆を選べるような仕組みを提供できればと考えています。

いろいろなコーヒーが飲めて、世界中のコーヒーを飲み歩くような「コーヒージャーニー」が楽しめるような仕組みです。また、豆の種類だけじゃなく、飲む場所やシチュエーションなどを変えて、さまざまなスタイルを楽しむというのも素敵なコーヒージャーニーのかたちだと思っています。

―下村さんはPostCoffeeだけでなく、コーヒー業界全体のことを考えているように感じます。その想いはどこから生まれてくるのでしょうか?

 

下村:ぼくがコーヒー屋を始めたときに、先輩や仲間のコーヒー屋さんといった「横のつながり」に助けてもらったことが大きいかもしれません。何も知らないぼくに、いろんなことを教えてくれましたし、さまざまな出会いを与えてくれました。ですから、その恩返しじゃないですけど、街のコーヒー屋と手を取り合って、世界中のコーヒーを多くの人に届けたいんです。

PostCoffeeという名前には「ポストに入る」という意味もありますが、「次の世代・時代のコーヒー文化を作りたい」という思いも込められています。まずはスタートしたばかりのプラットフォームを育てて、日本のコーヒー文化をさらに豊かに、おもしろくしていけたらと思います。そういった環境を整えることで、お客さまに新たなコーヒージャーニーを届けることができるはずです。

Text by 榎並紀行

Photo by 豊島望

Edit by 中川真(CINRA)

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