毎年母の日に、息子はケーキをくれる。
「花より団子」な私をよく知ったプレゼント。でも、今年は少し違った。
数百km離れた場所に住む息子から届いたのは、大きな花束。
母の日の代名詞のようなカーネーションは、鮮やかな赤というよりも深いボルドー。合わせて花束にされたシルバーブルーのエリンジウムと、ほどよく入ったグリーンには、フェミニンな花束にしたくない息子の気恥ずかしさが見え隠れしている気がする。
添えられていたメッセージカードには、「Beloved」というタイトルと、手紙のような文章が。「Beloved」はどうやら花束の題名みたいだけど、「最愛」なんて照れ臭い題名を、私の息子がつけるだろうか。
“その小さな背中に秘めた、力強さ。
その深い心で注ぎ続けてくれる、大きな愛。
あなたはまるで、
おおらかに輝くカーネーションのよう。
当たり前じゃない。
並大抵じゃない。
あなたのすべてを、素直に尊敬している。
これからも、あなたへのこの気持は変わらない。
ずっと、ずっと、そのままで。”
とっても綺麗な文章で、無愛想な息子が書いたとしたら、なんだかむずむずしてしまう。
花束に留められていた、「F.」のロゴ。きっとこれが、お花屋さんの名前なのだろう。
つい気になって、調べてしまう。どうやらF. [éf]というブランドは、お花を別々に指定するのではなく、メッセージ・ストーリーの込められた花束から好きなものを選べるそうだ。ゼロから花束をデザインすることは難しい息子には、まさにぴったりだったのだと思う。
どこでこのブランドを知ったのだろう、もしかして他の人にもプレゼントする機会があったのかしら…なんて思いながら、野暮かもしれないけど、HPを読み進めてみる。
今回母の日限定の花束として揃っていたのは、「Elegance」「Lively」そして息子が私にくれた「Beloved」の3種類。それぞれには花言葉をベースにしたメッセージが込められている。
・Elegance:色褪せない、ありがとうを。
トルコキキョウの花言葉:優美、すがすがしい美しさ
ヒペリカムの花言葉:きらめき、悲しみは続かない
この中から、息子が選んだのは「Beloved」だったんだ、と少し意外だった。さっきのカードに書かれていた文章もそうだけど、尊敬だなんて恥ずかしくて、「Elegance」の「色褪せない、ありがとうを。」にしそうなのに。
息子が想いをまっすぐに伝えられる大人になったのか、ストーリーを選ぶF. [éf]の花束だったから尊敬だなんて伝えられたのか。わからないけれど、いつもと違う2023年の母の日は、きっとこれからも忘れないんだろうな。
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