季節は秋にうつる。  

 

3歳と0歳の2人の娘と夏休みを過ごしながら、  
「ああ、8月はもう、私の知っている8月ではなくなってしまった。」と思う。  

 

昼間は外を歩けないほど暑く、ゲリラ豪雨も日常に。  
庭で育てている夏野菜たちも風に吹かれ、雨に打たれて、すっかり元気をなくしてしまった。  

 

気候変動の影響が、こんなにも日々の暮らしに入り込んできている。  

 

日中は外遊びを避け、好きな音楽やPodcastを聴きながら、娘たちとキャンバスに絵を描いたり、本を読んだりして過ごす。  
夕方になると、夕陽を見に、2人を連れて近くの海へ向かう。  

 

「ねぇ、ママ、かぜが、おいしいねぇ!」  
3歳の長女は、都心から海の近くのこの町へ引っ越してきた春の日、私に向かってそう言った。  

 

私も、本当にそう思う。  
深呼吸をすると、緑や潮のにおいが、風に乗ってやってくる。  
鳥や虫たちが庭に遊びにきては、大合唱している。  
季節によって、違うお花が次々と咲いては散っていく。  
野菜たちに水をあげると、毎朝小さな虹が見える。  

 

ーーー  

 

2020年、世界がひっくり返った。  

 

日本でも世界でも、悲しいことややるせないことが毎日のように起こり、私たちの周りを渦巻いている。  
テレビではもう、ほんとうのことを知ることができないと思ったから、リビングに置くのをやめた。 

 

「幸せとは何か。どう生きていきたいのか。」  

 

今までだったら、そんなことは脇に置いて、忙しい日常に流されて。  
そうしていれば、なんとなく日々を生きられたのかもしれない。  

 

あなただけじゃない。みんなも、私も。  
このひっくり返った世界を生きていく私たちは、  
そのことに直面しているのだ。  

 

あなたは、何に憤り、何を悲しいと思い、何を喜ぶのか。  
強さとは、優しさとは、なんなのか。  
幸せとは、一体なんなのか。  
どう、生きていきたいのか。  

 

こんなふうに、自分と向き合うのは、正直いって楽じゃない。  
できることなら、何にも気にせず、不安も心配もせず、  
思いっきり遊んで楽しんで、思いつくままに好きなことをして、  
好きな人たちと笑いながら過ごしたい。  

 

でも、だからこそ。  
だからこそ、今は、目を背けないでいたいと願う。  

 

苦しみの先にある美しい景色を、手を繋いでみんなで、観にいきたいと思うから。  

 

ーーー  

 

娘たちとの毎日を慌ただしく過ごしながら  
(時にはもちろん、親子喧嘩をしたりイライラしたりしながら)  
それでも、忘れないようにしようと、この夏、心に決めたことがある。  

 

それは、「美しさを心にためて生きる」ということ。  
さまざまな悲しみや憤りから、自分を守るために。  
真っ直ぐな心で、自分と向き合い続けるために。  

 

晴れた日に夕陽をじっと眺めていると、その美しさにハッとする。  

 

青と黄色から、オレンジになり、ピンクになり、  
最後はそれが紫と混じって、夜へと沈んでいく。  

 

海の静けさや荒々しさにも、心を奪われる。  
山の緑にも、植物たちの逞しさにも。  

 

自然のなかだけでなく、私にとっての美しさは、いろいろなところにある。  

 

美しい音楽や映画や、小説と出会った時にも、  
いつまでもその世界に漂っていたいと思う。  

 

心を込めて丁寧につくられたモノに出会った時や、  
目頭がギュッと熱くなるような、作り手の思いに触れた時。  

 

娘たちの初めての感情に触れた時、初めて何かができた時。  
日々の暮らしの試行錯誤が、ピッタリとハマった時。  
大切な友人と、心の奥底の思いを共有できた時。  

 

美しさは、私の心を助けてくれる。  
世の中の辛いことや悲しいことばかりに引っ張られていると、そのことすら忘れてしまうけれど。  

 

右も左も分からなくなってしまいそうな混沌とした世の中で。  

 

「あなたの好きなことは何?」と聞かれてさっぱり分からなくっても、  
「あなたは何を美しいと思う?」には、例えば、答えられるんじゃないかしら。  

 

あなたの美しさは、あなただけのもの。  
誰に何を言われる筋合いもない。  

 

私の美しさと、あなたの美しさは違うし、  
あなたの美しさと、あの子の美しさも違う。  
それがまた調和して、全体の美しさとなっていく。  

 

 そして同時に、私も美しく生きたい、と願う。  

 

自分の軸を持って強く生きていきたいし、  
壊れゆく地球をなんとかしたいし、  
誰も傷つけずに、誰かの幸せを支えたい。  

 

自分の美学に反することはしない、と言えばカッコいいけれど、  
そうもいかない毎日のなかで、それでも自分に嘘はつきたくないと思う。  

 

だから私は今日も、日々を紡ぐ。  
なんとなくではなく、自分の基準で選んだ、美しいモノたちとともに。  
季節の野菜を刻み、鍋に火をつける。お風呂を沸かし、寝具を整える。  

 

娘たちがこれから迎えるであろう、美しい日々のために。 

Text by 林理永  
Photo by meme  
Model by chihiro 

林 理永(はやし りえ) 
 


1988年 北海道生まれ。1/8アイヌ、お寺育ち。フリーランスの編集ライターとして様々なメディアで活動後、2017年に第一子、2020年に第二子を出産。2018年に『HAHA PROJECT(ハハプロジェクト)』を立ち上げ、現在はプロジェクトメンバーとともに、「整える」をテーマにした母たちのオンラインコミュニティ『banana』を運営。神奈川・葉山町にて、コミュニティハウス/サロン『整える研究室』もオープン準備中。  

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    2021.09.17