もくじ

1.蚕とは?

2.蚕は自然では生きられない?

3.蚕が食べられてきた歴史

4.蚕を食べるメリット

5.さまざまな蚕の食べられ方

6.あなたと地球の未来のためになる、サステナブルフード「SILK FOOD」

7.おいしく食べられる蚕に挑戦してみませんか?

蚕とは?

蚕とはカイコガのことですが、特に幼虫を指す場合が多いです。卵からふ化したばかりの幼虫は黒色で毛深いため、「蟻蚕(ぎさん)」「毛蚕(けご)」と呼ばれます。桑の葉を食べることで成長し、第二齢以降は不透明の白色です。さらに第五齢で「熟蚕(じゅくさん)」になると半透明化し、糸を吐いて蛹へと変態するための繭を作ります。約600種いる日本の蚕以外にも中国種、欧州種、熱帯種などの蚕が生息しており、養蚕はそれぞれの地域の歴史や文化と深く関わりながら今もなお続いています。

蚕は自然では生きられない?

新芽

蚕の歴史は古く、約5000年前にはすでに中国で飼育されていました。蚕が成長の過程で作る繭からは、絹(シルク)という天然の繊維がとれます。絹糸は織物に使われるようになり、次第に価値が高くなった絹糸や絹織物は主要な貿易品になっていきました。

日本でも絹糸をとるための養蚕が盛んになり、蚕は長い時間をかけて飼いならされて品種改良されました。そのため、現在では野生の蚕は一切存在せず、人からエサをもらわずには生きられなくなったのです。

蚕は、ふ化してから約27日で繭を作りだします。サナギが作る繭のほとんどは糸をとるために使われますが、一部は卵を残すために成虫まで育てられます。そして、成虫は一切エサを食べることがなく交尾後は数日で死んでしまうのです。

蚕が食べられてきた歴史

繭

絹糸をとるために改良され飼いならされていった蚕は、次第に食用としても利用されるようになりました。その歴史には、養蚕業の成長が関係しています。農家の副業として飼育されることが多かった蚕は、絹糸をとる過程で食用に活用されるようになっていくのです。

 

製糸業の繁栄による産業廃棄物としての活用

繭の中でサナギになった蚕は、成虫になると繭に穴を開けて外へ出てきます。繭は蚕が吐き出した長い1本の糸で作られていて、一つの繭からとれる糸は1,200~1,500メートルほどにもなります。
長くて質の良い絹糸をとるためには、成虫に穴を開けられる前に繭から糸を取り出すことが必要です。繭はゆでると糸がとりやすくなるため、ほとんどの蚕はサナギの段階でゆでられたり、保存するために繭のまま乾燥されたりします。

大量の絹を作る段階では大量の繭が必要になり、糸をとった後には大量のサナギが残ります。残ったサナギは産業廃棄物として処理されますが、養蚕を営む農家ではサナギを食用として活用してきたのです。

 

副業をしていた農家での自家消費

蚕の成長には適度な暖かさと湿度が必要であり、農家では屋根裏を利用した副業として養蚕が行われてきました。育てた蚕のほとんどは製糸工業に売られますが、繭の質が悪く製糸工場へ出荷できなかった繭は自家消費されるようになり、サナギも調理して食べられていたのです。

養蚕業は輸出の解禁とともに発展し、主要な輸出品となっていきます。しかし、第二次世界大戦で製糸工場が減少したことや、合成繊維の出現により蚕の生産は次第に減少していきました。

養蚕が減ると蚕を食べる機会は減っていきますが、その習慣は残り続けました。現在でも長野県などでは、当時のように蚕の佃煮などがスーパーに並ぶ光景が見られます。

蚕を食べるメリット

繭

最近は、コオロギをはじめとした昆虫食の話題を耳にすることが増えましたよね。食べられる昆虫として蚕も注目され、地球温暖化やたんぱく質の供給不足などの問題への対策として期待されています。
蚕はほかの昆虫に比べて風味が良く、栄養価も高いのが特徴です。蚕を食べることで得られる栄養や、環境へ与える影響など、蚕を食べるメリットを詳しく紹介していきます。

 

豊富な栄養素を摂取できる

近い将来、人口増加などによりたんぱく質の需要が供給を上回る「たんぱく質危機」が世界中で起こるといわれています。このたんぱく質危機の対策として期待されているのが昆虫食です。

蚕にはたんぱく質を中心に62種類もの豊富な栄養があり、とくに蚕のたんぱく質は良質で、植物性たんぱく質と比べて多くの必須アミノ酸を摂取できるのがメリットです。

【蚕に含まれるおもな栄養】

 ●オメガ3脂肪酸

 ●亜鉛

 ●ビタミンB2

 ●ビオチン

魚や肉の供給量の減少が懸念されるこれからの食生活にとって、蚕は注目すべき食品といえるのではないでしょうか。

 

昆虫食のなかでも、食べてもおいしい

動物性たんぱく質に代わるたんぱく質としてさまざまな昆虫が食べられていますが、栄養があるというだけでは、なかなか昆虫食を始めてみようとは思えないかもしれません。

蚕には、昆布だしやかつおだしに含まれるうまみ成分のアミノ酸や核酸などが含まれているため、おいしさを感じやすくなっています。また、ナッツのような味わいもあるので、これから昆虫食に挑戦する方にも食べやすくおすすめです。

 

身体だけでなく地球にもやさしい

牛や豚などの家畜を飼育する過程や商品として輸送する過程では、膨大な温室効果ガスが発生しています。昆虫食は飼育しやすく環境への負担が少ないため、次世代のたんぱく質として期待が寄せられているのです

たとえば牛の飼育と比較すると、蚕の飼育で必要な水やエサの量や排出する温室効果ガスの量の違いは次のようになります。

 ●エサ:1/5以下

 ●水:1/50以下

 ●温室効果ガス:1/100以下

また、養蚕のために品種改良されてきた蚕は、飛ぶことがなく限られたスペースでも飼育できます。エサは植物だけで水は不要、3週間~1か月と短期で収穫できることなどから収穫までを効率よく行えるのもメリットです。

蚕は栄養面だけでなく環境にもやさしく、これからの時代に合ったたんぱく質です。

さまざまな蚕の食べられ方

木のフォークとスプーン

蚕は繭から絹糸をとるだけでなく、漢方薬にフンが使われたりサナギを食用にしたりと、余すところなく活用されているスーパーフードです。サナギの形のままで調理する以外に加工して食べられるなど、さまざまな食べ方ができます。

ここでは昔から食べられている方法から最新の食べ方までを紹介します。

 

サナギの佃煮

日本では、さまざまな地域で醤油や塩で煮詰めた佃煮として蚕のサナギが食べられてきました。なかでも長野県は、海が遠く魚介類からたんぱく質を摂取しづらいこともあり、貴重な栄養源として蚕の佃煮が食べられた歴史があります。

蚕は佃煮として食べる以外にも、糸つむぎの作業の合間にそのまま食べることもあったようです。また、サナギだけでなく成虫のカイコガを食べる場合もあり、大正時代には群馬県粕川村でカイコガを食べるのがはやっていたという話も残っています。

 

韓国料理「ポンテギ」

韓国には蚕を調理した「ポンテギ」という料理があります。ポンテギはサナギという意味があり、蚕のサナギを蒸したりゆでたりして醤油や塩で味付けしたものです。

韓国では露店で紙袋やコップに入れて売られたり、居酒屋のメニューとして並んでいたり、おつまみやスナックのようにして食べられています。日本でも、ポンテギを扱う韓国料理店で味わうことが可能です。

 

蚕のフンを活用した食品

蚕はサナギだけでなく、フンも食用に使われます。中国では神経痛や関節痛などの治療に使われている「蚕沙」は、蚕の幼虫のフンを使った漢方薬です。蚕は桑の葉のみを食べて生きているため、乾燥したフンは葉っぱのようなにおいがするのが特徴です。

またアミノ酸や葉緑素、ビタミンなどが含まれていることから健康食品としても注目されています。桑の葉の香りがするお茶やクッキーなど、さまざまな種類の商品が販売されていますよ。

 

シルクフード

たんぱく質危機や環境問題の対策として期待されている蚕ですが、まだまだ昆虫食にネガティブなイメージがある方は多いものです。虫そのままの形では食べるのに抵抗を感じるため、近年ではパウダー状に加工した代替たんぱく質「シルクフード」が開発されました。

蚕を加工してパウダー状にすることで、虫の形を意識せずに食べられるだけでなく、クッキーの材料に加えるなど食品へ配合しやすいと注目を集めています。

あなたと地球の未来のためになる、サステナブルフード「SILK FOOD」

国産米と蚕の旨かるチップス

「SILK FOOD」は、蚕をおいしい食品へアップサイクルした食品です。身体にも地球にもやさしく、栄養豊富で安心して食べ続けられるサステナブルフードを販売しています。

昆虫食は抵抗があると感じている方にも食べやすいよう、チョコレートやチップス、プロテインスムージーなど試しやすい商品がラインナップされています。

また、2020年には「シルクフード」を体験してもらうために、期間限定で店舗を出店。シルクフードを味わった多くの方から「おいしい」と評価されました。

昆虫食のメリットはわかっても少し抵抗があるという方は、食べやすい「シルクフード」から試してみるのはいかがでしょうか。

おいしく食べられる蚕に挑戦してみませんか?

かいこプロテインスムージー

たんぱく質不足や環境問題の対策として、期待されている昆虫食。今回は蚕が食べられる歴史や、どのように食べられているかを紹介しました。養蚕業が盛んであった日本では蚕が食べられた歴史が長く、蚕の佃煮などは身近な食品でした。

蚕は、アミノ酸を豊富に含む良質なたんぱく質をもち、おいしい風味が魅力です。エサやスペースが少なく飼育できる蚕は、地球温暖化や環境汚染など環境面でも多くのメリットがあります。

昆虫食と聞くと、虫の形そのままを思い浮かべ抵抗のある方も多いかもしれません。蚕を使った食品には、パウダー状のものやスナックやドリンクなど食べやすい商品が多いので、ぜひトライしてみてくださいね。

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【参考サイトURL】

・丹後織物工業組合「1.シルクとは」※1個の繭の糸の長さは1,200~1,500m

・東京工業大学「カイコの繭から糸を繰ってみよう!」※繭糸長さ1,300m

繭屋あだち「2.乾繭について」

クロスカレンツ「日本の養蚕」※農家の副業

税関「2 開港~明治(1868 年~1911 年)」※明治の主要輸出品

本学術振興会「科学研究費助成事業 研究成果報告書」※蚕の栄養

weblio「ポンテギ」

中屋彦十郎薬舗「蚕沙、蚕砂」

わたしの漢方薬「蚕沙」

朝日新聞デジタル「とろけるカイコのフン入りクッキー」

昆虫食通販バグズファーム「あ!ほんとに蚕入ってるんだクッキー」

昆虫食通販バグズファーム「【国産 蚕 小石丸】蚕糞茶」

和食の旨み「旨味とは?主要な5つの旨味成分と多く含まれている代表的な食材」