もくじ

taliki・5PMとは?

-まずはtaliki・5PMをそれぞれ紹介したいのですが、talikiとはどのような企業なのですか?

 

中村:一言で表すと、「社会課題を解決する起業家を応援する企業」です。「社会課題の解決」と聞くと、NGOや行政の取り組みを思い浮かべる方が多いですが、それだけじゃ足りない部分って結構あるんですよね。そこをビジネスで満たすプレイヤーを増やそう、というところからtalikiは始まりました。

今は「種」を育てる段階で、ビジネスの立ち上げを応援したり、立ち上がったものに投資をしたり。9月に有楽町マルイで開催したイベントでは、我々の投資先や応援先のブランドを集めさせていただいており、食に関連して社会課題を解決するプロダクトをポップにかわいく販売させてもらいました。

有楽町マルイにてtalikiが開催したイベント「食からはじめる私たちの未来」

Hiroya:「社会課題」とはどのようなテーマがあるんですか?

 

中村:よく耳にするもので言えば、「気候変動」や「フードロス」です。気候変動へのアクションは様々ですが、例えば今回出店してくれているLOVST TOKYOさんは「石油素材は環境負荷が大きい」という課題に対して、それをできるだけ減らすことに加え、廃棄されたリンゴを活用したアップルレザーのバッグを作っています。動物性のものも一切使っていないので、「ヴィーガンレザー」とも呼ばれています。

 

Hiroya:「ヴィーガンレザー」気になっていました。レザー製品はもともと大好きなんですが、ニュースやSNSで環境問題・社会課題を耳にしているうちに、このままの買い物の仕方で良いのかなと迷い始めていて。そんな時にサボテンレザーやアップルレザーのような新しい選択肢があることを知り、「これは素敵だ!」ってときめいています。

 

中村:皮ごとの風合いも素敵で、なによりキャッチーじゃないですか? 「リンゴから作られているんだよ」というだけでトピックになりますし、話題にするために買ってくださるお客様もいらっしゃいます。

-では、次に5PMの紹介も。

 

Hiroya:はい。5PMは、「本当に欲しかったモノとの暮らしを叶える #誰かに教えたくなるブランド」を紹介するキュレーションメディアです。

モノやブランドの選択肢が増えていくなかで、「こういうのが欲しかったんだ!」とときめいたり、「これを使っている自分が好き」と思えたりするモノやブランドに出会える機会が減ってきた気がしませんか?そこで、「じゃあ我々が愛している・思わず誰かに教えたくなるブランドが集まる場を作ったら、他の誰かにとってもときめく場所になるんじゃないか」という想いから5PMは始まりました。

 

中村:めちゃくちゃ共感します。まさにそんな存在が欲しかったんです。大人になって、買えるものが増えてきた結果、モノを持つこと自体が退屈になってきました。それってモノと自分の「繋がり」を感じられないからじゃないかなって。でも、大切な人から貰ったモノや、友達から凄くオススメされて買ったモノって心に残っているんですよね。

 

Hiroya:まさにそういうことですよね!僕は昔の自分よりも、今の自分のほうが絶対に好きです。昔の買い物の仕方って「通販サイトでセールになったら買う」みたいな体験が多かったのですが、それこそ「繋がり」が薄い。でも、今は5PMを運営するなかで「これは欲しい!」と思えるモノに出会い、それを作った人の話を聞けて、買って家に置けて。まさに欲しかった暮らしが出来上がってきている気がしています。

 

中村:家を見渡して視界に入るモノが思い入れのあるモノや大切な人からのプレゼントばかり、っていうのが結局何よりも幸せなんですよね。

 

「社会課題解決型のブランド」とは、目的を果たすためのブランド

-talikiさんが応援するブランドさんは、「ここが違う!」と感じるところがありますか?

 

中村:はい。明確に違うのは「目的」です。社会課題解決型のブランドは「気候変動防止」など、まさに社会課題の解決を事業目的にしています。そこから、目的を果たすための「この層の消費行動を変えたい・もっとこんなモノを手に入れやすい環境にしたい」があり、最後に取り組みを持続するための売り上げ・利益があります。

 

Hiroya:最上位に目的があるんですよね。5PMは社会課題解決型のブランドだけを紹介するわけではないのですが、talikiさんとかなり重なる部分があります。僕らが紹介するブランドを決めるとき、大きく3つの軸があります。1つ目は、生活者と直接つながり、共感され・応援され・愛されるブランドなのか。2つ目は、作り手がプロダクトをとことん愛しているか。そして3つ目が、「未来の当たり前」を作っていこうという目的があるか。

一過性のトレンドではなく、「未来の当たり前」を作りだそうという意思は、「そんなところまで!?」と思ってしまうほどのこだわりとしてプロダクトに表れる。そんなプロダクトを中心に生まれるコミュニケーション・佇まい・姿勢が共感を生むと思っていますし、なにより僕はそういうブランドが好きなんです。

 

中村:わかります。私たちは「ネクストスタンダードを作るブランド」って言っています。例えば今、LGBTQ+やヴィーガンの方々は「マイノリティ」とされてしまっていますが、私は、それが「当たり前」になる時代がすぐに来ると思っています。でも起業家の人たちは、そうなった世界を、段違いに高い精度で想像している。しかも、その当たり前を作っていく一歩目として何が大事か、というところにこだわりつつ、ユーザーさんとのインタラクションがあるから独りよがりにはなっていない。

5PMの紹介する#誰かに教えたくなるブランドの一部

Hiroya:あとは、企画者と作り手が分断されていないのも魅力ですよね。ブランドさんのインタビューをすると、皆さん「自分が作るから嘘はつきたくない」とよく仰ります。これ、考え方としてすごい共感していて。今5PMにいるブランドさんの多くは比較的小規模なのですが、プロダクトにその本人の意思を感じられるからこそ、生活者としても信じられるというか。

 

中村:今回イベントに出店していただいたほとんどのブランドは、ブランドの代表が一日中売り場に立っているんです。本人が自信を持って作って、「一番いい」と思っているモノを持ってきているから、熱意や誠実さ、こだわりがお客さんに通じて、自然とその場から離れられなくなりますよね。

Hiroya:他にも、ブランドさんからは多くのことを教えてもらいますよね。気候変動などに対して「じゃあ自分に何ができるんだろう?」と考えたとき、ブランドさんのストーリーやプロダクトの背景を知ると「そんな構造になっていたのか。このブランドを買えば自分もアクションに参加できる」とか。

 

中村:しかも、「やらなきゃいけないんだよ!」みたいな啓蒙とは違って、「かわいい!欲しい!」って入り口から「こんな社会課題があるんだ」「これを持てばこの課題解決に寄与できるんだ」とじわじわ幸せになれます。

 

Hiroya:生活者としては、「この商品欲しい!」から入るので、「社会課題を目的とするブランド」とは思わないことが多いです。まずはプロダクトを使って満足する。そこで、「こんな想いがあったのか」と知る。二段階楽しめるのがいいんですよね。

 

-素敵なブランドが集まっていますが、他に紹介したいブランドはありますか?

 

中村:リンゴレザー以外ですと、DLINK STRAWさんの「食べられるお花入りのストロー」です。

ストローって悪者にされがちですが、悪いのはストローではなく「商品に付いてくるモノ」ってイメージによる雑に捨ててしまう行動の方。その行動の認識を変えることで「モノを大切に使う」という消費行動に繋がっていくんですよね。例えばすごく可愛くて欲しくなっちゃうストローなら、自然と大切に使います。しかも「ストロー=食べられる」なんて考え、今までありませんでした。発想とちょっとした工夫で、今までの「ストローは無料でもらえてすぐ捨てるもの」という消費概念を変えてしまうなんて……脱帽です。

Hiroya:水筒やマイボトルは意識するようになってきましたが、「ストロー=使い捨て」は当たり前だと思っていました。盲点でした……。

 

中村:DLINK STRAW代表の野村さんは「ストローマエストロ」と名乗られていて、「ステンレス製だと飲み物が冷たく感じるからこんな飲み物が合っていますよ」など食べられるストローだけじゃなく自分に合ったストローの使い方も教えてくれるんですよ。シンプルに、世界の楽しみ方も増やしてくれるんです。

 

Hiroya:もはやフェチですよね!でも、そんなフェチを持つ人が好きなんです。例えば、白い紙の箱にドライフラワーを並べた「インテリアとしてのお花」を作るTHISBEEさん。代表の方はまさにすごいフェチの持ち主でした。紙箱の素材を決める際に約1000種類の紙を揃えて、全部触って確かめたり、人が認識できない細かさまでこだわり全体を設計していたり。話を聞く度に発見がありました。

 

中村:飽くなき探究心、偏愛があってこそ、感動するプロダクトを生み出せるんですよね。

うちの投資先のブイクックさんは、ヴィーガンのお惣菜を作ったり、そのレシピを研究したりしているのですが、今回ブイクックさんがイベントに持ってきたのは、他のヴィーガン系メーカーさんの商品なんです。代表の工藤さんは高校生の時からヴィーガンで、ヴィーガン商品への愛が尋常じゃない。自社ブランドじゃないものも、この上なく嬉しそうに売っているんです。その熱量が周囲に伝わってか、なんと初日の午前中に在庫が切れて、走って取りに行く姿を見かけました。

Hiroya:「好きで好きで、こだわって作りました!ぜひ使ってみてください!」というコミュニケーションのほうが、気持ちいいですし、使うときほっこりしますよね。ただおいしい/おいしくないでなく、手に入れた時の思い出がモノについてきて、日々の消費に彩りが生まれる。

 

-お二人は消費者として色々な商品を買っていると思いますが、そういった想い・こだわりが詰まった商品を選択した先の暮らしはどのようなものでしょうか?

 

中村:モノが手に入れやすくなったからこそ、裏に何かストーリーや、何かに貢献できているってだけでもすごい使いたくなります。あと、誰かから貰ったとか、おすすめされて買ったとか、思い出が紐づいていると「愛に囲まれているな」と感じます。

 

Hiroya:思い出に囲まれる感覚、わかります!旅先で見つけたものや気に入って買ったものが増えていくと、部屋が自分だけの夢の空間になりますよね。

 

中村:それで幸せになると、やっぱり人にオススメしたくなる。

 

Hiroya:僕らの「誰かに教えたくなるブランド」ってまさにそうで、満足すると「素敵、めっちゃいい」だから「教えたくなる」になるんです。

 

中村:私は離れて暮らす両親に送ることで「オススメしたい欲」を満たしています(笑)

 

Hiroya:「消費」って、言葉としてずっとあるじゃないですか。でも僕は、それとあえて「選択」という言葉を区別して使っています。商品のストーリーや作る人の想いにときめいて買うというのは「消費」ではなく「選択」と言いたくて。その選択にはその人自身のこだわりも投影される。選択の積み重ねが自分をかたち作るし、選択したモノに囲まれた生活って、自分を愛せるんですよね。

 

中村:投資先の話になってしまいますが、今回も出店しているKazamidoriさんという会社が「Soyonoma」という誰でも飲めるハーブティーを作っています。リラックスできる香りはもちろん、新しいけど、どこか安心するパッケージも可愛い。ノンカフェインのハーブティーです。元々カフェインを摂れない妊娠中の方向けの商品だったんですけど、販売してみた結果、色々な方に幅広く愛されています。

お茶って、口にするまでに少し時間かかるじゃないですか。ティーバッグ出して、お湯を沸かして、注いで、蒸らす。その時間って、片手間で何か食べながらPCを触る日常では味わえない時間。初めてクラウドファンディングで手に入れたSoyonomaを飲んだとき、「あ、今自分を愛せてる」と感じたんです。それを代表の久保さんに伝えたら、「食べ物は、誰かに作ってもらうことで愛されている実感が湧くけど、原料を作った農家さんもまた“誰かが幸せになったらいいな”と思っています。つまりいろんな人の愛の集合体が並ぶのが食卓だから、食べ物を口にしたとき、“自分が愛されている”“自分自身を愛している”と感じてほしいです」と言っていて、思わず泣きそうになってしまいました。

中村:……さきほどフェチの話がありましたが、それで言うと私は「社会企業家フェチ」なのかもしれません(笑)

 

Hiroya:じゃあ僕はブランドフェチっていうことですね(笑)

 

二人が目指すのは、みんなが幸せな社会

-taliki、5PMが社会起業家、ブランドを応援することで実現したい未来とは、どんな世界なのでしょうか?

 

中村:私たちの会社は、「命を落とす人・死ぬより辛い思いで生きる人の絶対数を減らす仕組みを創る」ことが最大の目的です。「生まれてきてよかった」と誰もが思える世界を目指しています。

今、環境や理不尽な社会構造など「大きな力」によって「生まれてこなければよかった」と思ったり、命を落としてしまったりという事態が世界中で起きていて、私たちはそれを減らしたいんです。だから、誰かの命を救う・守る・祝福する、そして自分を愛せるようにしてくれるブランドさんにこそ活躍してほしいし、デッカくなってほしいし、ブチアゲて応援します。

 

Hiroya:僕個人の意思として、一方的な搾取……これを「いじめ」と呼んでいるのですが、とにかく「いじめ」をなくしたいです。それは、僕が昔いじめられっ子だったのもあるんですけど。一方的な搾取は何より人権の問題だと思っていて。

例えば、サステナビリティの問題は「将来世代へのいじめ」だと思っています。若者たちが、声を上げる前に権利を奪われていってしまう。インクルージョンについても同じで、これを無視するのは、LGBTQ+をはじめ、マイノリティの人たちの人権を侵害すること。そういう「いじめ」をなくしたい、という想いが人としての根っこにあります。

その延長線上に、「5PMとして」は、「自分を愛せる人が増えてほしい」と思っています。自分への愛は、好きなモノを選択する営みを積み重ねた先に生まれると思っていますし、その選択肢としてサステナビリティやウェルビーイングを実現する意思を持ったブランドさんのプロダクトがある。「愛せる選択肢を増やしていきたい」というのが、5PMの意思・未来で、そこに僕自身の想いを載せているような形です。

 

中村:まずは自分を愛する。その先で誰かを愛して、結果的に誰かが救われる。自己犠牲もいいですが、せっかくならみんなで幸せになりたいですよね!

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プロフィール

中村 多伽(なかむら たか )

1995年生まれ。京都大学在学中に国際協力団体の代表としてカンボジアに2校の学校建設を行う。その後、ニューヨークのビジネススクールへ留学。現地報道局に勤務し、アシスタントプロデューサーとして2016年大統領選や国連総会の取材に携わる。様々な経験を通して「社会課題を解決するプレイヤーの支援」の必要性を感じ、帰国後の大学4年時に株式会社talikiを設立。関西を中心に社会起業家のインキュベーションや上場企業の事業開発・オープンイノベーション推進を行いながら、2020年には社会課題解決ファンドを設立し投資活動にも従事。撮影:岡安いつ美